ひと

ぐずった子も笑顔◇紙芝居師 若丸さん

ちば民報 2014.2.16

紙芝居の道具を横に笑顔で右手を上げ子どもたちにあいさつする若丸さん

拍子木の音、黄金バット、水アメ、カタヌキ、昔懐かしい街頭紙芝居の風景です。昭和の最盛期には、全国で5万人いたと言われる紙芝居師。最近では、まったくと言っていいほど見かけなくなりましたが、千葉に元気な女性の紙芝居師がいる、という情報をキャッチ。さっそく「口演」先におじゃますることにしました。

「ガオーン!」

会場は、流山おおたかの森駅前のビルの3階、流山市の出張所のロビーです。映画館やたくさんの店舗が入っている建物の中は、日曜日とあって多くの親子連れでにぎわっています。口演前の会場に着くと、いらっしゃいました。テンガロンハットにスリムなズボンとブーツの粋なカウガール姿、ヤッサン一座の紙芝居師若丸さんです。

寒いので今日は室内の会場です。案内のチラシを持った親子連れがチラホラと集まり出しました。遠慮がちに後ろの方に座ろうとすると、「どうぞどうぞ前の方に座って。一番前に座るといいことあるよ。何がいいことかは内緒」と子ども達を呼び込みます。

「元気だと思う人!」と若丸さん。「ハーイ」と子ども達。「一番元気な人にみずあめをあげよう」と言うと、さらに大きな声で「ハーイ」。子どもが大勢いれば中にはぐずって泣き出す子もいますが「泣いててもいいよ」と声をかけます。ヤッサン一座の紙芝居は観客と対話しながら進める「見世語り」というスタイル。紙芝居もいろいろ種類があって、定番の黄金バットのようなものから、クイズ形式のもの、題名のない紙芝居、終わりのない紙芝居など様々です。

クイズに正解した人や、正解でなくてもおもしろい答えを出してくれた人には、おもちゃのヒヨコが渡されます。これは後で型抜き一枚と交換できます。小声ではずかしそうに答える子は「えっなーに?」と若丸さんに聞き返され、ちょっぴり勇気を出して大きな声で答えます。なかなか答えのわからない子もいて「学校じゃないから、お母さんが教えてあげてもいいんだよ」と助け船。「すべってころんで?」「大分県!」なんてクイズもあり、子どもばかりか大人も力が入ります。お父さんお母さん達も30~40代ぐらい。街頭紙芝居は初めてという人もいるようです。

子どもたちに小道具を見せ話しかける若丸さん

小学生とワークショップで作った紙芝居は、好きな犬や自動販売機など身近なものを題材にしています。ワークショップでは自分の作品を発表するそうですが、発表できなくても色ぬりだけ一所懸命している子や、若丸さんだけにそっと読んでくれる子もいるんだとか。

動物の出てくる紙芝居では、ライオンが出てくるとみんなでいっしょに「ガオーン!」。「桃太郎?」の紙芝居ではいろんなパターンのお話が登場。おじいさんもおばあさんもいなくて、桃は流れて行ってしまいます。「どこに行ったのでしょう?」「海に行って沈んだ」「鬼ヶ島に行って鬼太郎になった」。想像は果てしなく広がります。

30分間盛りだくさんの口演でした。観客も少しずつふえ30人ぐらいになっていました。泣いていた子もいつしか笑顔になり、ぐずっていた子も何やっているんだろうと興味をひかれた様子です。口演の後は、チラシやヒヨコと交換で型抜きをもらい、みんな(特に大人は)真剣に挑戦。早々と割れてしまう人、時間をかけ慎重にやる人…。男の子が「できたよ!」と持って来ました。成功した人は景品がもらえます。私も人生初の型抜きに挑戦。やったー成功しました。

若丸スタイル

口演の後にお話を伺いました。プロの紙芝居師になったきっかけをお聞きすると、2009年4月の紙芝居師養成のオーディションを知ったことだそうです。ちょうど今までやっていた仕事が一段落し、次に何をしようかと思っていたところ。このオーディションにはどんな人達が来るのか、という興味もあって受けてみたそうです。絵が好きで作画に携わりたいと思っていましたが、演者の方が向いていると言われたとか。関西で大人気だったヤッサンこと安野侑志師匠の元で仲間といっしょに修業をつみ、2009年11月にプロ認定を受けました。

現在、月に数回の口演をしています。口演依頼は、企業や自治体、学校などからあり、フリーマーケットやイベントなど、東京・千葉・茨城・埼玉を中心に国内外で活躍しています。大人も子どもも楽しめる参加型紙芝居がモットー。「子どもの笑顔は何物にもかえられません」とこれまた笑顔で語る若丸さん。街頭紙芝居の世界は、失われてしまったものを教えてくれるとも。

これから、5年10年と続けていきたいという若丸さん。紙芝居に付き物の自転車を今日は封印しました。ひとりでの口演を考えると自転車は重くて持ってこられない。自転車には敢えて頼らない、若丸の紙芝居スタイルを築いていきたいのだそうです。これからも模索が続きます。

今や外国からも注目されている日本の紙芝居。この豊かな世界をいつまでも守って、広げていってほしいなと思いました。若丸さん、楽しい時間をありがとう。

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