ちば民報レポート

保健室の子どもたち 6 体の主人公になる

養護教諭サークル中学校◇かあべぇ

  ちば民報 2014.1.26

「陽性だった…」。Y子が自分で妊娠検査薬を使って調べた妊娠反応結果のことだ。2日前に「生理が1ヶ月遅れている」との相談を受けて心配していた。

「D君は、このこと知っているの?」「お家の人は、知っているの?」
「……」

聞きたいことは山ほどあるが、不安で一杯になっているY子に質問責めは止めた。「びっくりしたけど、相談に来てくれてありがとう」「さて、どうしようか…。今は、不安でいっぱいだよね…」

こんな事態は、想定はしていても、実際に妊娠反応陽性だったことがわかると、どんなにゆったり構えている私もあわててしまう。本来は命を宿す喜びであるはず。しかし、中学生の妊娠はあってはならぬことである。中学生が、妊娠・出産・ましてや一人の嬰児(みどりご)を育てることは、心身ともにあまりにも未熟だ。人格をもった子どもの親になる責任は、半端なことではない。

D男とカップルになったと聞いた時、「Hは、ダメよ」と、Y子に伝えていたが、付き合いだして、2ヶ月目に妊娠してしまった。二人は同級生。知識として避妊の方法は知っていたが、コンドームは使用していなかった。Y子は言う。「どうしてか分からないけど、自分は妊娠しないと勝手に思っていた…」

「一回のセックスでも妊娠をすることがある」ことを自分のこととは思っていなかった。実際のセックスの場面において、コンドームを使う理性を持ち合わせていなかった。体のしくみについて科学的認識は育っていなかった。性の指導は何であったのか。

自分の体に置き換えてはじめて腑におちる、体の仕組みと感情の動きも含め、まさに科学的に認識できる性の学習をどう組み立てていくか。顔面を殴られたような衝撃だ。
次の日も保健室に来た。

「お家の人に話せたの?」
「……」

誰にも知られたくないという思いは、分かる。しかしそれはできない。まず、本人から保護者に話さないことにはどうにもならない。中学生時代を生きるからこそ、体の主人公であらねばならないこと。産むか、産まないか。どうするかを決めるのは、あくまでも本人。大事なことは、「自分で決めること」。今、子育てするには多くの困難があることや、高校受験もできなくなること、自分の人生も大きく変わってしまうことなど、伝えなければならないことをじゅんじゅんと話す。

3日が経った。
「お母さんに話したら、赤ちゃん可哀想だけど、今は育てられないねと言われた。自分もそう思う」と。母がネットで探し出した遠くの産婦人科を受診したのは、1週間後。「赤ちゃん、2ヶ月の大きさだって言われた。また行って、血液検査を受けて、手術の前日にも行って…痛くないかなぁ…」「麻酔するから、痛くないと思うよ。大丈夫だよ」。今はただ、Y子の将来を応援していきたい。

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