保健室の子どもたち 9 ぴっかぴかの一年生

養護教諭サークル◇小学校 湯ばあば

  ちば民報 2014.4.20

春爛漫の4月。ぴっかぴかの小学校1年生が入学してくる。わくわくどきどきの子どもたちの中に、就学時健康診断のとき気になった裕也(仮名)くんはいるだろうか。

裕也くんは、虫歯が16本。毎日の生活はどんな過ごし方であったのだろうかと心配になる。保育所に行っていたのだろうか。

そればかりではない。ことばの検査では、「これは、何という名前のお花ですか?」と検査者(教師)が問うと、裕也くんは、かったるそうに、「草の花だよ」と答える。幼い子どもは、どの子もチューリップの花が大好き。画用紙に絵を描くと、太陽とチューリップは必ず描く。裕也くんは、チューリップの花も知らないのかなあ。お母さんとチューリップの花を愛でたことがないのかなあ。

「これは、何という名前ですか? どんなふうになきますか?」とひよこを指して問う。裕也くんは、「いじめたら鳴くよ」とこたえる。

ことばの検査では、ことばの発音がしっかりできてきているか。幼児語はクリアできているか。会話力(話する力)が育っているかをみる。答え方が気になる子については、発達のつまずきがないかどうか、問いかけを詳しくして、子どもをまるごと把握するようにしている。

裕也くんは、3年生の兄と夜仕事に行く母と3人暮らし。朝方帰宅の母は寝てしまうので、裕也くんは、保育所に送っていってもらえなかった。母が起きてくるまで、家の周辺をうろうろして遊ぶ。チューリップの花をみて母(大人)と楽しむ生活体験を獲得することはなかったのだ。子ども集団でごっこあそびをしたりする中で、人間関係、押したり引いたり折り合いをつけたり、コミュニケーションを学ぶ。そんな遊びができていないように見える。

脳神経系の土台は6歳児までに80%も急激に発達する。裕也くんは、それをうまくのばすことができていない。でもこれは、裕也くんのせいではない。

スキャモンの発達曲線(人間の各器官が、完成する20歳までにどう発達するかを示したもの)では、さまざまな生活体験をする中で、5歳児までに脳神経の軸索(ニューロン)を複雑に急激に増やしていく。そして1年生に入学したら、友達と言語を通して伝えるなかで、おだやかな発達の時期になる。5歳児までにぶつかり合い確かめ合い、急速に発達させた脳神経は、今度は、学力を獲得しながらゆっくりゆっくりのスピードで発達させていくのが本来である。

裕也くんのように生活体験を獲得していないために、発達しそびれている子に寄り添う具体的な発達課題を明らかにしていかなければならない。

毎日うんこをもらす貴くん。うんこは、トイレでするんだよ。おしりはこうふくんだよと、具体的に教える…。るんるんと、もんもんを抱えた、様々な1年生たちだ。

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