ちば民報レポート

保健室の子どもたち33 伝統、名門校が重い

◇養護教諭サークル 中学校 あまちゃん

  ちば民報 2016.6.19

5月の心地よい風が保健室を吹き抜ける。3年生の女の子たち数人が、風と一緒に回る。クルクルと。
「すてき!夢みたい」「ここで友だちと話すのがあこがれだった」口々に言いながら舞う。

学校の様々な事情から、保健室利用もかなり制限されていたという。3年間で初めて保健室に入った子たちが自由を満喫している。

転勤してきて初めて見た始業式。一糸乱れぬ礼。号令はなく、サーッ、サーッとわずかに制服のかすれる音が体育館に聞こえる。600人の生徒の無言の礼。

3年生の男子が1人で来室した。ガッシリした大きなからだを縮めるようにして丸椅子に座る。「先生!僕、疲れているんです」「どうして?」「伝統に疲れているんです」。

創立50年の行事のために繰り返される式の練習。何度も聞かされる“名門校”の伝統の重さと世間的評価。

「でも僕たちには関係ないじゃないですか?勝手にPTAや先生たちが言ってるだけ。何十年の歴史なんてどうでもいいことですよ」と、堰を切ったように一気に話す。はじめて会った生徒。どれだけの思いがあったのだろう。その子の一言は、この学校のすべてを象徴しているように感じた。

赴任して一カ月もしないうちに、子どもたちが保健室に押し寄せるようにやってきた。一教室ほどの広さの保健室が、休み時間ごとに生徒であふれかえった。そのうち、「いつでも保健室は利用できる。いつでも受け止めてくれるところ」と感じたようだ。子どもたち自身が、自然発生的に使用ルールをつくり落ち着いてきた。

相談コーナーを利用する子がいれば静かにする。放課後は楕円形テーブルを囲んで話の場に。成績や友だちのこと、好きな子のこと…。職員室とは違う素顔をたくさん見せた。

生徒と担任が一緒に来ることもあった。2年生の麻美もその一人。かなり太っていた。自分で毛を抜いてしまうため、坊主頭のように頭髪は短かった。「登校するとき、学校の時計が見えてくると、足が止まって、一歩も動けなくなる」と、苦しい気持ちを話してくれた。

「私の友だちで来られない子もいるんです。今度、連れてきていいですか?」不登校が、2、3年生だけで30人を超えていた。麻美との関わりは、不登校の子たちと向き合うきっかけとなった。

~生徒の詩から~

ま・ほ・うの場所
ココにはいろんな人が集まる。
熱のある人 かぜをひいた人
なかには心の重い人もココにくる
なぜだろう
どんなに暗い、悲しい顔をしていても
みんなの顔は ココにくるとちがう顔になる
とっても とっても 明るい顔
とっても とっても あったかい顔

どんなに冷めた学校でも ココだけはとってもあったかい、ま・ほ・う の場所

<ページトップへ>