ちば民報レポート

保健室の子どもたち34 「取っ組み合い」

◇養護教諭サークル 小学校 湯ばあば

  ちば民報 2016.7.17

ぎらぎらと太陽が照りつける夏がやってきた。プールでは、スイミング指導を受けている子どもらの歓声が聞こえる。今年も校庭のカイコウズが真紅の花を咲き誇り、子どもらの歓声と響きあっている。

保健室には、5年生の直人(仮名)と、2年生の良子(仮名)がいる。直人は、自閉症スペクトラムという診断がある。良子は場面緘黙(かんもく・特定の場面で全く話すことができなくなる)で、自閉症スペクトラムといわれている。

直人が、話し始めた。「先生、良子さんの声は、心の中に吸い取られてしまったのでしょうか!? 心の中でいっぱいお話しているのでしょうか?」と。直人は、何てすてきな感性を持っている子なのでしょう。

「そうですね。良子さんは、きっと心の中でいっぱいお話をしていますよ。直人さんのお話についても、きっとご返事していますよ」と私が言うと、「そうですね。声は吸い取られてしまったんだあ」と何度も言っていた。

直人や良子のように、自閉症スペクトラムという診断があったり、ADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害。読み、書き、数の分野のいずれかの分野が理解しにくい面をもっている)の診断があったりする子が、学級に在籍していると、学級担任は悩む。

2007年に、特別支援教育等の支援策が導入されたが、直人のような子がケアされたり、一人ひとりの特徴にあわせた教育をするとりくみはまだ遅れている。

直人や良子のような、いわゆる発達障害といわれる症状を持っている子に出会うと、いつも思い出すことが二つある。一つは、よっくん(3才)の話。出産時のアクシデントで彼の弟が重い障害をもったとき、母は思わず「かわいそうに…」とその小さな身体をだきしめる。そのとき、よっくんは、「おかあさん、かっちゃんは、かわいそうじゃなくて、かわいいでしょう。まちがっとるよ。」と言ったそうだ(子どものしあわせ マッキー共育讃歌より)。

もうひとつは、先天性軟骨形成不全症の紘子(仮名当時5才)のこと。卒園がまじかな3月。5才児クラスは、隣のM保育園にドッジボール大会に出向いた。M保育園の子どもたちは、小さくて小人のようにみえる紘子に向かって、「ちびだ、小人か?」とはやしたてた。一方紘子の保育園の子どもたちは、はやしたてたM保育園の子どもたちに一丸となって向かって、取っ組み合いとなった。

保育士さんたちは、子どもたちのやり取りを見守っていてくれたという。卒園式のときに園長先生が話してくれた。仲間を大事にする気持ちが育っている子どもらの姿を。実際にあった感動的な話だ。

子どもたちは、いっしょに生活する中で、仲間の特徴を知り、手加減を知り、学びあう共同の社会空間をつくっているのではないかと思うのだ。

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