風物

ボランティアが活躍◇千葉県立中央博物館

ちば民報 2013.8.4

千葉市中央区の緑豊かな青葉の森公園の北西の一画に、野外博物館・生態園を擁した県立中央博物館がある。房総の代表的な森林や草地を再現し、江戸時代の前よりあったという舟田池を囲む生態園は、ぐるりと巡ると気持がいい。同館教育普及課の立和名(たちわな)明美主任上席研究員にお話を伺った。

県立中央博物館の設立は平成元年(1989年)になる。国の畜産試験場等がつくば学園都市に移転した後、県が青葉の森公園として整備した広大な都市公園の一角、カルチャーゾーンに位置している。

薬師如来坐像、模造だが実に精緻

銚子市常灯寺の薬師如来坐像・模造

自然と歴史を研究と展示で

当時県の博物館は、一番古い「上総博物館」(現在は木更津市に移管「金のすず博物館」)や栄町にある「房総風土記の丘」(現「房総のむら」)の他、7館ほどあったが、人文系を主体としていて自然の分野が弱かった。それで“千葉県の自然誌や生態系を専門にした博物館を”という構想のもとに、生態学を研究していた沼田眞(千葉大学名誉教授)を初代館長として招請しつくられた。房総の自然を復元した生態園という、野外施設を隣に併設し研究の場としているのが、他県にない特徴である。

県内には県立のものとして、ここ中央博物館のほか房総のむら(印旛郡栄町・旧風土記の丘を含む)、現代産業科学館(市川市)、県立美術館(千葉市)、関宿城博物館(野田市)がある。大利根分館(香取市)、大多喜城分館(夷隅郡大多喜町)、海の博物館(勝浦市)の3館は中央博物館の分館だ。

中央博物館は、自然と歴史を重視し「自然誌の博物館」として展開している。県下博物館のセンター機能とともに、展示業務以外にも年間150回以上の講座を開き、研修会や観察会を組織している。職員数は分館含めて70名程で、中央博物館本館だけで研究員が40名以上いる。1階は収蔵庫のほかに研究スペースがあり、専門分野の研究やフィールドなどに出た活動をしている。

タコブネ(からを持ったタコ)の殻の模造

タコブネ(鋸南町元名産)・模造

生きた博物館活動を目指して

フィールドミュージアムは県内に昔から伝わる伝統食や、その地にしかないものを掘り起こし、守り伝えている。生きた博物館活動として幅広い活動を目指しているが、まだ十分やり切れていないと言う。

中央博物館は来年で25周年を迎えるが、意外と県民に知られていないようだ。初めて常設展示を見た人が「こんなに数も内容も充実しているとは思わなかった」と言うほどだという。開館当時に比べ小・中学校の団体が年々減っている。子どもも先生も学校内の勉強だけで忙しくなっていることを反映しているのだろうが、学校教育にも積極的に活用して欲しいという。

一方、中高年の方が増えていて、深く興味を持たれた方たちがボランティアとして百名近く活動し、解説される方以外にも収蔵庫の中で資料整理などをおこなっている。東日本大震災の後は、東北で被災した植物や昆虫標本のクリーニングなどのお手伝いもした。

今年の冬には、いすみ地域で植物の植生調査をおこない、ボランティア調査員が発見した、植物の「イスミスズカケ」が新種に認定され大発見となった。

また、開館当時から友の会が活発に活動しており、職員を招いた観察会、講座を独自におこなっているなど、県民と職員との協働で、県民とのつながりを作っていると感じた。

今は県の「財政難」を理由にして、予算と人員が減らされているように見える。博物館活動は人類や地球的視点が大切であろう。目先のことでとりかえしがつかない事態にしてはならない。

標本と本物そっくりに再現した展示

展示を見ると、ナウマン象の骨格標本や東京湾の干潟のジオラマなどが目立つが、千葉の昆虫の標本や、県立レベルではトップクラスだという植物標本など、生物の分類展示がこの館の特色のようである。

人文分野の展示では銚子市常灯寺の木製薬師如来座像の複製など、いずれも本物と見まごうばかりだ。

太古から今に至る自然と人間の歴史に触れられるかけがえのない世界である。自分が何千年も何万年も生きてきたような不思議な気持ちになる。これを機に県内全ての館に足を運びたくなった。

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