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最低限度の生活保障

ちば民報 2015.2.8

昨年9月、銚子市の県営住宅に住む母親が家賃滞納で立退き強制執行を受けた当日に、中学2年の娘の命を奪い、自らも死のうとした事件が波紋を広げています。

1月19日、全生連、中央社保協、自由法曹団、住まいの貧困に取り組むネットワークが共同して、千葉県県営住宅追い出し母子心中事件現地調査団(団長・井上英夫金沢大学教授)を組織し、県と銚子市を現地調査。県営住宅の家賃減免の徹底と生活保護行政の改善などを要請しました。今回の事件でも適正に減免が適用されていれば、月額1万2800円の家賃が2割負担の2560円ですみ、悲惨な事件とはならなかったでしょう。

県は住宅課と福祉課が対応。県営住宅の入居世帯は1万7878世帯(25年度末)で、そのうち減免対象になるのは1万1616世帯です。しかし減免が実施されているのは1961世帯(26年度末)、減免が受けられる世帯の17%です。

県営住宅入居者はもともと生活困窮者です。行政は家賃減免制度があることを周知徹底する必要がありましたが、「待ちの姿勢」に終始していました。県は、「減免制度についての説明は滞納が4ヶ月となった時点で徴収員を通じて行うよう指導する」と述べました。

調査団は、「滞納1~2ヶ月という初期の段階で減免をすすめることが大切だ。徴収員は嘱託で回収が主になっている。減免をすすめられるように、制度を熟知した県職員が対応すべき」と県に求めました。

銚子市では、保険年金課と社会福祉課、都市整備課が対応。市は、「一昨年4月5日に本人が保険年金課を訪れて、国保証の発行をしてくれるようにとのことで、3ヶ月分の短期証を発行した。4月から娘が中学校に入学し、中学でも就学援助を受けたいというので、生活保護を勧め、社会福祉課に行ってもらった」と経過を説明しました。これは県営住宅入居不許可決定された後のことです。中学入学には10万円近くかかり、就学援助では1学期末で間に合いませんから、生活保護行政が対応することが不可欠でした。

ところが面接記録は勤労収入も、家賃滞納も聴きとらず、肝心のところで「未聴取」が多いことがわかりました。「担当者は“覚えていない”と言っている」と、ずさんな面接が明らかになりました。

国交省は今回の事件をうけ、「困窮者家賃減免徹底と負担軽減措置を」との通知を出しましたが、「通知は受け止める」としつつ、市営住宅800戸で減免が行われているのはたった1件ということでした。

県と市の現地調査の報告を受けた井上団長は、「命が軽んじられ、人が亡くなったことへの深刻さが薄い。再発防止のために行政責任を追及したい」と語りました。安形義弘全生連会長は、「千葉県、銚子市だけでなく、自治体が最低限度の生活保障の役割を果たしていない。今の公営住宅は、“建てない、取り立てる、追い出す”というのが実態だ。国は生活扶助を下げ、生活保護の水際作戦では、面接記録さえまともに取らせない方向に向かわせている」と怒りの報告をしました。

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