実例が満載「生きる力の輪」

現場で立ち向かう事こそ

ちば民報 2016.11.13

千葉県民医連新入職員研修会が10月31日にあり、「なぜ母親は娘を手にかけたのか…居住貧困と銚子市母子心中事件、この母の叫びに応えていたら~」と題して講演しました。

入職後に初めて政治や社会情勢に触れる職員が、民医連が運動に取り組む必要性を、具体的な社会問題から考えたいとの趣旨です。参加者は約40名、今年4月入職の医師、看護系、リハビリ系、介護系、薬剤師、レントゲン技師、臨床工学技士、事務系など多職種の職員たちです。

2014年9月24日、銚子市の県営住宅で家賃滞納による強制退去の日、母親が中学2年の娘を殺し、自分も死のうとした事件が起こりました。国保税月4000円を滞納する生活苦で、「家を失ったら生きていけない」と思い詰めた果ての事件でした。生活保護を受けたいと思って役所へ行ったが帰され、事件当日の所持金は2717円。預金残高は1963円でした。母親の収入は月7万円と児童扶養手当合わせて12万円ほどです。家賃は1万2800円でした。県営住宅の家賃の減免がされていれば月額2560円で済み、家賃滞納での強制退去は行われず、また生活保護が開始されていれば母子の命は救えたのです。

千葉地裁の判決は、「被告人は身近に頼りにできるものもおらず、長年にわたり生活に困窮する中、強制執行によって住む場所を失うことが現実になることを知り、自分が死ぬかもしれないという心境にまで精神的に追い詰められた状況で強制執行の当日を迎え、突発的に犯行に至っている」と述べました。

貧困は個人の責任ではなく、社会の仕組み、構造的要因によって生み出されます。このことから、その解決は、社会、国家の責任においてなされなくてはなりません。そんななかで、医療・介護など生命や生活に関わる社会福祉の現場こそ、時代の動向にどう立ち向かうかという自覚が必要だと訴えました。

参加者はグループで意見交換し、考えなければならないことを出しあいました。「個人ではなく、社会資源を理解する必要性を私たちが学ぶ必要がある」「役所は他人事に対応するのではなく、相手の立場で考え、“困ったことはありませんか”という声かけが必要だ」「役所はなぜ追い詰められた人を助けられなかったのか。何をしたらよいかという、手立てが提供できなかったのか」「入院患者は(状況が)ある程度わかるが、外来はわかりづらい。貧しい人にどう対応したらよいか」「一般の人は制度がわからない。早期のサポートが必要」などの感想が寄せられました。

生命や生活に関わる職員の覚悟が感じられた新入職員研修でした。

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