実例が満載「生きる力の輪」

意に反する指導指示許さず

ちば民報 2017.6.11

Oさん(56歳)は工務店をしています。4年前の真夏、高血糖で意識を失い緊急入院しました。医療費が払えないため生活保護を受けました。この4年間、毎月欠かさず収入と必要経費を届け出てきました。この4月はリフォーム工事がキャンセルされ、無収入の届け出をしました。それに対し、ケースワーカーは、「来月はどうなりますか。仕事がなければ車を処分して就労指導の話し合いをします。上司が立ち会い説明します」と言いました。

Oさんは、「キャンセルは『物価値上げで出費が多いため』ということだった。市は仕事を断られた私らの実情を理解していない。大工40年、車を処分して他の仕事を、と言われてもできない」と生健会に相談にきました。

5月23日、Oさんに同行し、担当ケースワーカーとその上司に説明を求めました。「車の処分と、他の仕事をとは、何が根拠か」と質問しました。

上司は生活保護手帳を示し、「法第27条による指導指示である。『ウ、本人の稼働能力、同種の就労者の収入状況等からみて、十分な収入を得ているとは認めがたい』ので、少しでも収入が多い仕事を指導した」というのです。

Oさんと私は、「毎月まじめに収入申告し、お客さんの都合でキャンセルとなり、無収入の申告となった。自営業者の実情を理解しているのか。職歴40年の大工に、車を処分し他の仕事を探せとは、人権侵害」「そもそも生活保護法第27条の指導及び指示は、『生活の維持、向上その他保護の目的達成のため』であり、生活保護を受けている人の『自由を尊重し、必要最低限度にとどめ』『被保護者の意に反し』てはならないとしている。Oさんの自由の侵害、意に反する指導をやめよ」と、強く申し入れました。

なぜこんなことが起きているのでしょうか。今年3月、厚生労働省社会・援護局保護課が全国自治体の生活保護関係係長を集めて、2018年度の生活保護行政に関する会議が開かれました。そのなかで、「生活扶助基準の検証」と「制度全般の検討」として、
①就労支援の強化、
②医療扶助の適正化、
③貧困ビジネス対策(無料宿泊施設)、
④事務処理負担の軽減
などを重点課題に位置づけたのです。

また「生活扶助基準の検証」では、各種加算や級地の検証が進められ、夏以降に検証結果が出ると言われ、特に母子加算が再び廃止されるのではないかと懸念されています。

「就労支援の強化」では、生活保護利用者の就労支援参加率を現35・8%から 60%以上に引き上げる目標(業績評価指数)を掲げ、各自治体に徹底するとしています。今回のような就労指導がさらに強化されれば、深刻な人権侵害が起きるでしょう。「医療扶助の適正化」は、頻回受診の抑制、後発医薬品普及を掲げ、医療費の圧縮と生活保護利用者の生存権を踏みにじる措置です。

保護バッシングと人権侵害を許さず、来年の生活保護改悪を阻止しなければなりません。

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