ちば民報レポート

今こそ“生きる力の輪”

2012.7

タレントの母親が生活保護を受けていた事例をとりあげての、「生活保護バッシング」がひどい。これを利用し自民党国会議員が生活保護費の10%削減を要求、厚労相は「扶養困難証明義務化」を述べてはばからない。こうした事態を受けて千葉県生活と健康を守る会連合会(以下生健会)は6月初旬、千葉県と話し合いをもった。

プライバシー

生健会は話し合いに先立ち、①生活保護受給者のプライバシーを守らせる、②「扶養」照会等にあたっては慎重を期すとともに、扶養義務は申請要件ではないことを徹底する、③生活保護費削減に県は抗議をする、等の要望を出している。話し合いには共産党の丸山慎一県議が同席し、県は佐近優子健康福祉指導課長、小森武彦自立支援室長らが対応した。

丸山県議は「不正受給は問題だが、それはごく一部。問題とされているタレントの母親は不正受給ではないのに、扶養を要件とするキャンペーンに利用されている。しかもプライバシーの漏出として問題だ。県の対応について聞きたい」と、今回の話し合いの場を設定した趣旨を述べた。

生健会の妹尾七重会長は、「今回のニュースなどについては、生活保護にかかわる多くの人が心配している。受給者たちは今、“周囲の人から何を言われるか分からない”と、外出さえできないほど精神的に追い込まれている。こうした動きがすすめば“餓死”“孤立死”という深刻な事態が、身近なところでおきかねない」と述べ、プライバシーの侵害と扶養の照会は、生活保護の根幹にかかわる問題だという点について、県の認識を問いただした。

県は、「“母親が生活保護”の件は、個人のプライバシーが漏出したこととして問題」、福祉事務所にたいし、「たとえばDVの被害者などやむを得ない場合には扶養の照会をしないなど、一律的に行わないよう指導している」と述べた。また「多くの方はちゃんと制度のなかで生活保護を受けている」と回答した。

要望項目については、生活保護制度は国民の信頼のもとに運営されているとして、①の個人情報については、福祉事務所は特に生活保護について守秘義務を負っている。民生委員についても注意喚起している。「保護のしおり」にプライバシーが守られることを記載することも考えている。②については、これまでと違った施策を進める場合には、受給者に十分な説明をする。「辞退」がある場合には受給者の真意か、廃止後の生活の考慮はされているかの精査を求める。また新規の申請時に、扶養義務は申請の要件でないこと、扶養義務の強制が行われていないかを審査している。「扶養」の意味を誤解して相談に来た場合は、懇切丁寧に対応する。③については、国の動向を見守るとの考えを述べた。

これを受け生健会からは、「例えば性的暴行を受けて生活保護を受けている仲間もいる。親にも言えない苦しみを味わいながら生活保護を受けているケースもある。プライバシーや人権を無視した論議が公の場でなされてはならない」と、今回の「バッシング」への批判の意見が述べられた。

本人の合意なく

参加者は「むやみに不正受給のレッテルを貼られる心配がある。私は犯罪人ではない」という切実な手紙が来ていることを紹介。「申請の時あたかも刑事の取り調べのような扱いをうけ、奥さんが泣き出すようなケースもある。だまし討ちのように親戚の名前を聞き出し、本人にことわりもなく扶養照会することがあたりまえのようにやられている」との切実な声を訴えた。

県は「ケースワーカーに人手不足があり、個別に丁寧に支援していくのはなかなか難しい状況がある。県も市も一生懸命やっていきたい。多忙な中でも機械的に扶養照会をするのでなく、話し合う中で可能性があれば照会するとのスタンスでやっていく」と答えた。

生健会は、「福祉の現場は大変な人手不足(松戸は1人で120件、千葉市でも100人以上)で、一律な対応が目立つ。プライバシーが心配で受けられなかったり、保護を受けているからと、鬱状態に陥っている仲間がたくさんいる」と、ケースワーカーの増員と適切・丁寧な対応への改善を訴えた。

さらに千葉市で、定期的に提出する収入申告用紙に“不正受給は犯罪です”と大きな字で印刷されていることをとりあげ、「一部の“不正受給”をテコにして保護が必要なケースを抑制しようとしているのではないか」と訴えた。

“不正受給”は0・3~0・4%。さらに生活保護を受けられる低所得者でいながら、受給していない人が8割以上も放置されている。

“保護を削りたい”という政権や自民党の狙いと、それをあおるマスコミの事実誤認や意図的なキャンペーン。「事実は違う。生活保護という最後の命綱を守れ」と、保護行政を預かる県に確固とした意見と姿勢を示すよう求めた。

この話し合いの翌日、またしても恐ろしい報道を目にした。「生活保護の不正受給が深刻化する中、神奈川県では行政と警察がネットワークを構築し不正受給の取り締まりに乗り出す」(東京新聞・6月9日夕刊)。

警察官OBが福祉事務所に配置される動きは各地でおこっているが、このニュースは警察が福祉行政に組織的に公然とかかわるもの。驚愕すべき動きといわねばならない。「不正」は許せないが、これは行政が福祉の立場に立って解決すべきことだ。憲法に保障された正当な権利を保障すべき福祉事務所に、警察を配置するようなことが許されるなら、日本は警察国家になってしまう。

ましてや、日本の相対的貧困率は先進国で2番目に高い。この責任は歴代政権にこそある。生活保護は最後のセーフティーネットであり、必要な人は誰でも受けられる権利として、どう守り改善していくのか。これは保護が必要な人だけの問題ではない。すべての国民と社会が連帯した「生きる力の輪」の真価が今、問われている。 (編集部)

◆千葉県生活と健康を守る会連合会
047(407)0802

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