ちば民報レポート

ソーラー発電で町おこし「市民発電わたしのでんき」

  ちば民報 2014.1.26

壮大な夢を語ってくれた小林由紀夫さん

原発事故を契機に再生可能エネルギー社会への転換をめざして、多古町旬の味産直センター(高橋清代表)がソーラーパネルによる「市民発電わたしのでんき」をスタートさせたというので、センターを訪ね小林由紀夫理事(50歳)にお話をうかがいました。

「福島」の経験

同センターでは、3月11日の事故直後、ちば民報で取材したことのある福島県南相馬市の三浦さんなど、農民連福島青年部の6人を、センターの交流施設である「しんのみくうかん」に避難先として受け入れたことがあります。

彼らと農業を一緒にやりながら、また福島へ支援に行って現実を目の当たりにし、原発と農業は共存できないことを実感したのです。福島の彼らの畑は津波で水没し、畜産農家も放射能汚染で再起不能となっていました。

そこで、原発や大手電力会社の電力に頼らない、市民が参加できる「地域分散型の発電システム」を学ぶために、消費者と共にドイツやスイスなどを視察しました。そのなかで、とくに参考になったのがスイスのチーズ工場でした。

ここでは、工場の熱源を木質バイオマス(チップボイラー)に変更し、工場だけでなく地域に温水を供給(各地域に配管をして)していました。また、70㎡の市民ソーラ温水装置を住民の出資で設置し、出資者にはチーズ商品券を12年間配布するという取り組みをしていました。センターでも、この方式を見習うことにしたのです。

ソーラパネルを設置したのは、①新婦人を中心に、全国の3千人が契約している「市民農園・わたしの田んぼ米工房」の精米所屋根に、1時間当たり40Kwの発電装置と、②交流施設「しんのみくうかん」の屋根に、1時間当たり15Kwの発電装置でした。

出資者つのり

旬の味産直センター交流施設「しんのみくうかん」の屋根いっぱいにソーラーパネル

このために売電事業を行う「㈲エコファーム旬菜」を設立し、売電利益で地元の農産物を提供することにしました。1口5万円の出資で、毎年5千円分の農産物を年2回に分けて10年間届けることになりました。出資金の返済はしません。これは、新たな産業を多古町に起こす「地域おこし」にもなり、単なる太陽光発電だけではない取り組みとなったのです。

出資者は、主に「市民農園」の契約者が中心でした。今日まで6百人超の応募で、出資額は2千万円を超えました。なかでも、センターの産直で深く交流をおこなっている新日本婦人の会神奈川県本部からは、4百人超の応募があったのです。しかし5万円という参加費は高額で、80代の方は周りの人に止められたといいます。それでも「原発に頼らない運動に、自分は参加していたのだ」ということを、子や孫に知ってもらいたいと応募してくれました。「10年間も生きていない」という人もいました。再生可能エネルギー社会への転換は、「息の長い運動」として「子や孫に届ける」のだから、この運動を力に「あと10年がんばるゾ」という人も出てきてくれたのです。

地域を循環し

小林さんはオーストリアの貧しい地域であるギュッシングでのエネルギーでの「町おこし」の話もしてくれました。ギュッシングは産業もなく、農業も衰退し住民の多くが出稼ぎに出るような町でした。「なぜ貧しいのか」と、その原因を探求した結果、灯油・電気・ガソリンの年間コストが36億円もかかっていることが判明。大金が地域から流出していたのです。再生可能エネルギーの自給を始めたところ、年間18億円が地域に循環され、農家は副収入が入り、新たな産業も生まれ、自治体の税収も4倍となり、豊かな町に生まれ変わったというのです。

日本のエネルギー輸入コストは年間25兆円。エネルギーを大手電力会社から地域に取り戻し、この膨大な資金が地域を循環すれば、豊かな地域(農村)へと生まれ変わることができると、壮大な夢も語ってくれたのでした。

食と農を守る

小林さんに今後の取り組みのこともうかがいました。今度は、各農家でおこなっていたお米の「乾燥・籾すり」をセンターで請負い、その電力をソーラ発電でまかなうというものでした。今、農業従事者の高齢化が進み、各自での「乾燥・籾すり」が困難になってきているからです。そのための参加者を、これから募っていく計画でした。

しかし、この施設を作るにあたって心配なのが採算です。「食と農と命を危くする」TPPへの参加で、9割の田んぼがなくなる、地域が崩壊する危険が迫っているからです。TPPと地産地消の取り組みは、相反するものです。これをいかに皆で守っていくかが今後の課題だと、小林さんは話を締めくくってくれたのでした。

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