ちば民報レポート

悪徳ファンドと闘う昭和ゴム労働組合

  ちば民報 2014.2.2

国会で鋭く追及

机を向かい合わせにして話し合う労組のみなさん

日本共産党の塩川鉄也衆議院議員は昨年11月、経済産業委員会で、アジア・パートナーシップ・ファンド(以下、APF)に経営権を掌握された昭和ゴムで、会社資産の約3割がAPFグループ企業へ持ち出され、労働組合への不当労働行為がくり返されている問題を取り上げて追及しました。産業競争力強化法案にファンド活用が盛り込まれていることに関連した質問です。「会社を実質支配するファンドによる、会社資産の収奪や労働者の人権侵害があってはならない。企業の持続性維持や労働者保護措置を盛り込んだファンド規制に踏み込むべきだ」と穏やかな口調ながら鋭く国に要求しました。

そして昨年末、塩川議員は柏市の昭和ゴム本社工場内にある同労働組合事務所を訪れ、執行部を中心とする組合員らと懇談し、国会報告をおこなうとともに、今後のたたかいについて意見を交換しました(右写真)。

同社は柏市に本社があり、創業は1886年。ゴム製品の一貫製造企業で、かつては明治製菓のグループ企業で、最盛期の従業員数は約700名でした。同社は拡大路線の失敗から1992年ごろ経営危機に陥ってしまいますが、労働組合は会社を倒産させない闘いにとりくんできました。しかし創業者である明治製菓は2000年に、ゴム事業になんの関心もないファンドに保有株を売却し撤退してしまい、この時から職場を守るため、労組のファンドとのたたかいが始まりました。

資産が奪われる

当初介入してきたいくつかのファンドは、超短期利益追求型のファンドで、株価引き上げ等による証券市場からの差益を収奪するとさっさと撤退してしまいます。ファンドによって会社資産が奪われ、本業の設備投資が放置されてきたことに、労働者は危機感を持ちました。

ところが経営者は、ファンドとの決別を求める労働者の要求に応えることなく、2008年6月、APFグループに第三者割当増資をおこない、APFは過半数の役員を送り込んで、昭和ゴムへの支配権をにぎりました。このAPFによる支配は、それまでのファンドと違って、労働組合を敵視し不当労働行為や組合攻撃を繰り返すなど、さらに悪質なものでした。

APFは、わずか半年足らずの間に、増資額の2倍をはるかに上回る、総額27億円もの資金を昭和ゴムからタイのAPF子会社に還流させました。さらに持株会社化と会社分割により、昭和ゴム株式会社は子会社とされ、会社を実質支配する親会社の昭和ホールディングスや、その上に君臨するAPF経営者と、団体交渉を行うことが困難になりました。

労組は、27億円の会社財産が流失させられ一向に返済されず、資金繰りの支障から本業も閉鎖されるのではないかと危惧を持つに至ります。こうした中、金融庁に対し増資額を上回る巨額な資金の流失は「架空増資」ではないかと訴え、従来踏み込んだことのない、金融庁企業開示課、公認会計士審査会、東京証券取引所、公認会計士協会への要請行動へと活動域を広げて行きました。社会的にファンドを規制していく本格的なとりくみの開始です。こうした運動の結果、2000年6月に金融庁証券取引等監視委員会は、「疑いあり」として親会社やAPF代表宅などへ一斉強制調査に入りました。

一方、明治大学の野中郁江教授は、雑誌「経済」2011年6月号に「不公正ファイナンスと昭和ゴム事件―問われる証券市場規制の機能まひ」との論文を発表しました。その内容は、昭和ゴムで起きているファンドによる不正を暴露し、行政にその解決を求めるものでした。ところがAPFファンドは言論封殺をねらい、「名誉毀損された」と野中教授に対し、5500万円という巨額の損害賠償を求める裁判を起こします。

塩川議員は、「自分のフトコロを肥やしさえすれば会社は潰れてもいいというような、企業を食い物にするハゲタカファンドが今や社会問題になっている。企業存続・維持を担保し、労働者保護のルールづくりなしに今日のファンドの横暴を止めることは出来ない」と、問題のポイントを指摘しました。

アベノミクス

労組の立て看板には「労災と赤字の責任を我々に押しつけるな!」と読み取れる。

そしてこうした事態を生んだのは、「持株会社解禁の独禁法改正や企業再編をやり易いルールづくりなど、利潤第一を加速する法改正ばかり進めてきたから」と、歴代政権の規制緩和政策を批判しました。

産業競争力強化法は、安倍内閣がキャッチフレーズとしている「世界一企業が活動し易い国づくり」の目玉法案です。中身は、「ファンドを活用し、労働分野の規制緩和をどんどんやる」というアベノミクスの骨格の一つといえます。

今やファンドは、単に投資主体であるだけでなく、過半数の役員を送り込んで会社を支配してしまう存在になっています。そして短期的利益だけを追い求め、本業の存続や長期的成長には無関心で横暴になります。ところが、この法案にきっぱりと対決し、反対したのは日本共産党だけでした。

前述の野中郁江教授と全労連編著により、「ファンド規制と労働組合」(新日本出版社2013年12月20日初版)がこの懇談会の直前に発行されました。労働組合と研究者、弁護士の共同研究によるもので、オビには「ファンドの投機・略奪的行為から、職場と労働者を守るための提言」と記されています。

塩川議員はこの真新しい本を示して、「みなさんのたたかいは1冊の本になるようなたたかい、次につながる教訓となる意義あるたたかいです。ものづくり企業をつぶすようなファンドを野放しにしていたら日本経済の将来もありません。ファンド規制のルールづくりに向け、国政を動かすようなみなさんのたたかいを実りあるものにするために、日本共産党としても力をつくしたい」と参加者を励ましました。

国会報告のあと質疑、意見交換をおこないました。「年収200万円にも満たない」という若い組合員の話や、「ものづくりをコツコツやってお金が発生するものだと思う。お金を動かすだけで、それが1日で何倍にもなるみたいな、そんな世界がちょっと信じられない。そんなファンドは許せない」という素朴な組合員の感想に、悪徳ファンドに対する心からの怒りとたたかう意志が感じられました。

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