ちば民報レポート

漁業を持続させる・千葉県総合水産研究センター
◇種苗生産研究所富津生産開発室

  ちば民報 2014.2.9

パネルを使って研究センターないを説明する川津浩二室長

魚介を栽培する

1月24日の朝、NTV系で放送された「各駅停車の旅」を見ていたら、路線バスの旅で全国区になった、俳優の太川陽介が内房線の旅をしていた。千倉駅を出発した彼は那古船形(なこふなかた)で途中下車をする。2年前この地に取材に行った記者は、食堂が見つからず近くのスーパーで冷たくなった弁当を買って食べた。

太川はこの日、相浜海岸の方に歩き漁協直営の店を発見して入る。メニューにあった見事な「伊勢エビ丼」を注文しようとして、よく見ると価格が書いてない。おそるおそる店の人に注文すると、「伊勢エビは水温が低いと動かず3月にならないと収穫できない」という。それで仕方なく「なまだ丼」という物を食するのだが、その美味しさと魚の正体(ウツボ)におどろく。

テレビなどを見ていると、千葉県は伊勢エビの生産日本一の地位にあると言っている。その秘密を知りたくなり、富津にある千葉県総合水産研究センター種苗生産研究所富津生産開発室を訪問した。内房線木更津駅から3つ先の大貫駅で下車する。プラットホームから跨線橋を渡るとき、遥か先に富津の東京湾観音の姿が見える。そこから海沿いに約25分ほど歩くと着く。

鈴木和良所長

取材に伺ったのは、先のNTVの放送から2日前のことだ。会議室には鈴木和良所長さん(写真左)と川津浩二室長さん(写真上)が待っていて下さった。

山国に育った記者は、海の生物の生態はほとんど分からない。種苗生産という名前を聞くと、植物の種を育てているようなイメージが思い浮かぶ。魚介類はたくさんの卵を産むが外敵に食べられたり、稚魚はエサ不足や環境の変化で大部分が死んでしまうそうだ。

この施設では見学も受け付けており、見学に来た小学生に魚の種類によって「なぜ卵の数が多いのか」と聞くと、大体「他の魚に食べられてしまうから」と答えるという。おそらくウミガメが殻を割ってふ化し海にたどり着く前に、カモメなどに食べられてしまう姿を思い出すのだろう。

この種苗生産研究所では、これら死亡率が高い卵や稚魚を、施設内の大きな水槽で十分管理して効率よく飼育し、大量の稚魚(種苗)を生産する仕事をしている。種苗は成長に伴ってさらに広い育成場が必要になるので、種苗生産の水槽より、さらに大きな水槽で中間育成される。

なぜ栽培漁業が必要なのか?漁業とは海から魚介類・藻類を獲ることであるが、近年水産資源や漁獲量が減っている。そのために農業で言われている「栽培」の概念を海に導入した。つまり地上の種や苗にあたる卵や稚魚を育てて海に放流する。こうして漁業が成立することに加えて、この成立が将来にわたって持続され、今後もずっと人が魚介類を食することができるようにしようとする仕組みなのだ。

具体的にその役割は水産総合センター、種苗生産研究所がになう。中間育成は(公益法人)千葉県水産振興公社や地域栽培漁業推進協議会(漁協)がになっている。食物の畑の耕運などにあたる事柄が、人工魚礁設置などの漁場造成や、漁場改善となる。さらに収穫段階には大きさの制限や、禁漁期間、禁漁区域が決められる。

富津生産開発室の栽培漁業は平成3年からマコガレイ、平成12年からヒラメが行われて現在も継続している。クロダイは放流効果の算定、つまり、費用対効果を検証している段階であり休止している。ガザミも生産を中止している。漁業者のニーズが高いヒラメ放流数を倍にするためだ。マコガレイは、全長17mm・80万尾を種苗生産し、その後種苗を中間育成し、全長40mm・46万尾を生産・放流する計画だ。これらの生産工程を千葉県が行っている。放流された魚たちがどのように育っているか、試験操業などによって追跡調査される。中間育成されたマコガレイは尾びれが曲がっているので、市場に出された魚を見るだけでかなり正確に把握できるという。

管理された施設で

マコガレイの仔魚はわずか13mmくらい

かつては魚の種類によっては背びれにアンカータグをつけて、捕獲した人や漁師の人に持参して貰い、お礼にタオルなどを配布していた。要するにどの業種の仕事においても対投資効果が確認されなければならない。現在は水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する第六次基本計画(平成22年から26年まで)が行われている。

 

取材した日は病原菌の持ち込みの危険性があるため、研究施設内部の種苗には面会できなかった。しかしビーカーに入れた13mmくらいのマコガレイの仔魚(幼生)を見せて頂いた。ふ化後22日から25日目になるため、身体の両側に眼があったが、そろそろ左眼が右側に移動しつつある。この仔魚を育てるには、0・15~0・23mmのワムシや、もう少し成長すると0・8~1・5mmのアルテミアを与える。その後は0・2mm以上の魚粉などを固めて整形した配合飼料を与える。

最初の伊勢エビの話だ。千葉で伊勢エビが沢山捕れる理由は、黒潮の影響や恵まれた漁場などが考えられている。しかしまだ伊勢エビの生態については良くわかっていないこともある。一位を維持するため、産卵期を禁漁期にしたり、網にかかった小さなエビを海に帰すなど、センターの研究者や漁業関係者が地道な努力を続けている。

 

種苗生産研究所は展示室を見学することができる。お申し込みは0439(65)4367

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