ちば民報レポート

南房総市 薪暖房機が地域変える

  ちば民報 2014.3.16

地域に眠る再生可能エネルギー資源(間伐材など)を活かす取り組みを、南房総市でおこなっているというので、南房総市役所を訪れました。対応していただいたのは、地域資源再生課の塚田課長と押元主任主事。当日は、この取り組みを継続的に市政に求めて活動している、共産党の安田美由貴議員が同席してくれました。

地域資源再生課!

山の平地部につくられた間伐木材の集積地。枝打ちされた丸太が野積みされ、それがいくつも見える。

間伐木材の集積地

最初に、「地域資源再生課」という部署が設けられていることに驚き、その事情を伺いました。地域資源再生室が設けられたのは4年前。翌年には地域資源再生課が、いわゆる「特命課」として設けられました。市の就業者の25%は第1次産業に従事しており、林野面積は市域の54%を占めるなど、豊富な森林資源を有しています。

森林整備では、年間3千立方メートルの間伐材が発生(適正に間伐すると3万立方メートル発生)しますが、その内の27%しか活用(市場出荷・製材・杭木等)されていません。残りの73%は「切捨て間伐」として山に放置して腐らせていたのです。時代の要請もあって、平成22年度に国の施策が、「切捨て間伐」から「利用間伐」へと転換されました。切り捨てていた未利用材の新たな需要を創出し、国産木材自給率の向上、衰退する林業の再生、森林荒廃の解消を図る必要性に迫られていたのでした。市としても、望むところでした。

二つのゴムタイヤのついたエンジン式油圧シリンダーの薪割り機。割った薪が高く積み上げられているのが見える。

薪割り機を使って薪にする

市では、「木質バイオマス事業」に着手しました。当初は、木質バイオマス発電所の誘致等が検討されましたが、温暖な市の地域的特質や「木質燃料と石油燃料の燃料価格比較」の調査などにより、施設園芸用の「薪」(対A重油※価格比で43%)が実現可能との結論を得ました。
(※A重油は軽油の一種)

こうして、平成23年度に2件の薪暖房機のモニター利用者を創出し、取り組みを開始。その結果、今まで1台を稼働させるのにA重油だと年に30万円かかったものが薪だと年に16万円ですみ、年間14万円の燃料費削減を可能にしたのです。平成24年度は、再度モニター事業を実施し、暖房機の改良や薪の品質保証(含水率20%)等に取り組んできました。平成25年度には、市の補助制度を創設し、暖房機1台(40~50万円)の2分の1(上限20万円)を助成、10台分を導入しました。これにより、薪の供給量を3百立方メートル、年間発生間伐材の10%にまで拡大してきたのです。今後の展開として、平成26年度には20台、27年度には30台が予定されました。

花卉農家も大喜び

カーネーションが栽培されるビニールハウスの中

南房総市は花卉園芸の本場
(写真はカーネーション農家)

押元さんたちに、実際に施設園芸用薪暖房機(釜石市石村工業製・通称ゴロン太)を利用している花卉(かき)農家、間伐材を伐り出している山とその集積所(山土場)、間伐材を薪にしてコンテナに積込む現場(木質バイオマスヤード)に案内してもらいました。

最初に訪れたのは、モニター事業に参加したカーネーション農家。ここでは百坪のハウスの中で、初代ゴロン太が使われていました。市の施設園芸の総面積は40ha以上で薪暖房機にすれば千台分にあたります。需要の潜在力が高く、ゴロン太の導入を喜んでくれる人が多かったのです。

次に訪れたのは山土場。正面の杉林の山が、綺麗に伐採されていました。この伐採の仕事は県森林組合が担当。伐り出した木材を選別し、薪にする木材を次のヤード(市有地)に送ります。ヤードでは木材をチェーンソーで玉切りし、薪割機で割って薪を十分に乾燥させます。ここに、次年度分をストックするのです。この仕事も、森林組合が臨時雇用の人を雇って担当していました。現在は、玉切りや薪割はほぼ手作業ですが、この2つの作業を連動して行う高性能薪製造機(3百万円)の整備を考えているようです。

どこでもできる

山土場や木質バイオマスヤードなどを訪ねてみて、まだ10台の薪暖房機ですが、間伐材が活用され、地産地消の地域循環型社会の仕組みづくりが、徐々に始まっていることを実感しました。もともと、日本の化石燃料のコストは年間25兆円といわれています。化石燃料への依存は、それへの支払いによって、地域から富が流出することを意味しました。これが、地域・農家を「貧しく」している原因になっているのです。

化石燃料への依存から脱していくことが、地域に大きな富をもたらすだけではなく、新たな産業と雇用をも創出するのです。地方では所得に対するエネルギーへの支払いの割合は大きくなるため、化石燃料に頼らない暮らしによる個々の農家や家庭での節約効果は、見かけの金額以上に大きいのです。

増加し続ける化石燃料への支払いを少しでも減らし、地域の資源を活用したエネルギー利用こそが、地域を大きく変えていく原動力になっていきます。そのためにも、地産地消のエネルギーの取り組みを一自治体の取り組みに終わらせることなく、千葉県全体で計画的に推進する必要性を感じました。そうしてこそ、森林の豊かな可能性が生きるのでは、と実感させられたのでした。

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