ちば民報レポート

若者いじめる奨学金

  ちば民報 2014.4.20

「奨学金の負担が重い」。青年の非正規雇用が増えているなか、切実な声が多く聞かれる。奨学金は2012年度で大学生256万人の52%、2人に1人以上が利用しているという。一方、返済滞納者は約33万人、未返還額は過去最大で約876億円となり、10年前の2・5倍に急増した。奨学金利用の実態と負担感などを、借りた本人と親御さんから聞いた。

返済は837万円

「返還誓約書」には冷厳にも一般のローンと同様の定めが記載された誓約書の見本が2枚。

船橋市内に住むAさんは国立大で4年、大学院で1年間学び、大学在学中に日本学生支援機構から、奨学金を無利子・有利子あわせて月14万4000円の限度いっぱいに借りた。借りた総額は、有利子480万円、無利子198万円で計678万円。20年返済で、利子も含めるとなんと約837万円になる。月々の返済は約3万4千円だ。社会人になる時点でこの借金は重い。

大学の授業料は年に56万円。それなのに限度いっぱい借りた理由は、授業料のほかに大学院の入学金や授業料の準備に加え、すぐ下の弟さんの入学金50万円ほどをAさんの奨学金で負担したためだ。

大学院に進んだのは、学芸員で働くことを目指していたから。「学芸員の資格だけではなかなかなれないので、修士ぐらいとっておかないと」との思いからだ。

「1、2年の時はバイトの鬼です(笑)。塾の講師にコンビニ、さらに不定期で日雇いでも働きました。生活費はもちろん、車の免許を取る費用もバイトで作りました。さすがに3年になると勉強が忙しくなりますから、だいぶ控えましたけどね」と学生時代の生活を振り返る。

Aさんが学生だったとき、日本育英会は支援機構に変わった。そのときの説明では、「制度は変わるけど、安心していい」と言われた。Aさんは、まさかこんなに変質するんてありえないと思っている。育英会の頃は、教職や研究職などに着くと支払いが免除されたりしたが、それが無くなり、借り入れから返済まで一般の金融機関とほとんど変わらなくなった。

「本来の目的が教育を受ける権利の保障なのに、“学を奨める”制度になっていない。卒業時に誓約書を書かせられるんですよ。“払わないと犯罪です”っていう感じのビデオを見せられて、その上でまた同じことを口頭で説明して書かせるんです。まるで脅しです。返済を滞納すれば延滞金10%がつきます。連帯保証人も必要で、払えなければ督促、場合によっては債権回収会社もからみます。誓約書を書いたら、あとは一般のローンと同じ、“単なる借金”なんだなとつくづく思い知らされました」といいながら、書類を見せてくれた(写真)。

「無償化」の現実

返済額は大変重い。これを20年間も払い続けなくてはならない。「払い終える頃には、子どもたちも大人になっちゃいます。うちの弟たちもそうですが、多くの学生が就職先を探すときに、やりたいことより、クビにならずに安定して借金を返していけるところを探します」と言う。奨学金制度の実態をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと語った。

Aさんは、博物館の嘱託職員として働きはじめた。月収は通勤費込みで15万円あまり。通勤費は2万円ほど支給されるが、車で田舎道を50分もいくためガソリン代が月3万円はかかり、5千円前後は持ち出し。奨学金の返済もあったので、ダブルワークの生活が続いた。

「食費なんて、せいぜい月5千円でした。普通は捨ててしまう、キャベツの外の葉をもらってきて食べていました」。

その後結婚し、今は、埼玉県内の生涯学習施設で解説員として働いている。ただしこの施設は外部委託されているので、その会社の契約社員という扱いだ。だから市からの委託が受けられなくなれば、即解雇だという。

博物館や生涯学習施設などの多くは地方自治体によって運営されている。ところが昨今は予算が削られ外部委託がほとんど。3年あるいは5年で、自治体との契約が切れれば、自動的に退職させられる。

「本当なら学資保険くらいかけてあげたいのに」と、まだ小さい赤ん坊を寝かしつけるAさんの後ろ姿がさびしい。

「結婚後の仕事も契約社員なので家計は大変です。最近2人目の子どもが生まれましたから、本当は学資保険くらいかけたい。しかし、住宅のローンもありますから、そこまではまわせません。保育園は、契約社員ということでポイントが低く、認可は入りにくいし…」と悩みを語る。

「学芸員はやりたい仕事なので転職は考えていません。この仕事は、生き死にに直接かかわらないからか、予算がどんどん削られています。文化的分野は人間らしくあるためにはとても大切な分野です。大学で安心して学び、やりたい仕事で働けるような環境が大切です。給付制の奨学金制度はどうしても必要だと思います」と語る。

    ◇

政府は2012年9月、国連人権規約に定められた中等・高等教育の「漸進的無償化条項」を受け入れた。現実はそれと相反する。大学の学費は高すぎる。大もとは、国から大学への運営費交付金の削減や、私大への運営費助成の少なさ(この30年余の間に国の助成は、約3割から1割に減額)にある。

OECD加盟34カ国のうち、17カ国は大学授業料を無償化している。さらに給付制の奨学金を導入し生活費まで支えているのは32カ国と大半だ。この国はどこまで若者たちをいじめるというのか。

結婚も出来ない!

Bさん(親) 私の子は2年の時から奨学金を借りました。夫が仕事が無い時でしたので、無利子で借りられました。授業料は私学ですので年間80万円、施設維持金も払わなくてはなりません。4年間で都合640万円かかります。

大学卒業後は専門学校に行くと言うので、「アルバイトでもして、自分でお金を作ってね」と言っています。

Cさん(親) 5人の子どもが奨学金を借りて大学へ行きました。4番目の子の時は無利子奨学金は、200人中8人ですって。

有利子と無利子の組み合わせで借りて、多い子で月13万円。卒業の時点で600万から700万円以上の借金で、返済額は900万にもなります。娘は「こんな借金背負っていたら結婚もできない」と言っています。「給付制奨学金を求める署名」絶対署名したい!と思いました。

▼奨学金問題を積極的に取り組んでいる民青同盟千葉県委員会委員長の窪田拓也さんは、「世界一高い日本の学費は高校生や学生をはじめ、若い人たちの夢や将来の展望を奪っています。 奨学金の会が請願署名を集めています。ホームページ(『奨学金の会』で検索)からダウンロードし署名を送って下さい」と語っています。
http://www1.ocn.ne.jp/~shogaku/gazo/2014syomeiomote2.pdf

送付・連絡先 千葉市中央区宮崎町495―10―A民青千葉県委員会

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