「権力からの独立」はどこへ

  ちば民報 2014.6.8

青木敏之書記長

――野田市で今年4月から第2、4土曜日の授業が始まった。動機は、「全国学力・学習状況調査の結果で、家庭学習の時間が短いことなどがわかったため」だという。子どもたちの学力が劣っているから、土曜授業で引き上げるというのだ。「全国学力テスト」は競争教育の過熱化につながると、教師、父母からも指摘されている。
実施された経過を教育委員会に聞いた。野田市の教育委員会事務局が提案し、校長や教頭、教員の代表が参加した場で論議され、教育委員会議にはかり決められた。現在の教育委員会制度でも、ここまで行政の意志が反映される。
ところが安倍内閣は、さらに教育への介入を強めようとしている。
今国会で成立が狙われている教育委員会制度「改革」法案について、全教千葉教職員組合の青木敏之書記長に聞いた。

首長の思いのまま

青木 教育委員会制度は1948年の教育委員会法で設けられました。当時の文部省発行の「教育委員会のしおり(昭和28年8月)」は、「教育は真理をめざして人間を育成する営み…中略…政治活動の影響が常に及ぶとすると、いわゆる不当な支配が教育に加わる場合も生じて、教育の特殊な使命を完全に果たすことができなくなる」と述べ、「権力からの独立は教育委員会制度の重要な精神」と述べています。それは戦争の時代に、教育が権力に従属したことへの反省からくるものです。

――当時の市の教育委員会は5名の委員で構成したが、1名は市議会議員から選び、残り4名は住民が選挙で選んだ。また教育委員会は首長に対し、教育関係予算の原案を提出するなどの権限もあった。しかし1956年にこれを変える法律が通り、教育委員は首長の任命制となり選挙もおこなわれなくなった。こうして歴代の自民党政権は、教育委員会の政治からの独立性を壊してきた。中野区準公選制はそれへの一つの住民の抵抗だ。

青木 安倍政権が今国会で成立を狙う「教育委員会制度改革」は、さらに教育を政権にとって都合が良いものに、政治(首長)の思いのままにするもの。究極は「大企業にとって都合のいい人づくり」「戦争する国づくり」へと突き進むものだといえます。

――法案の中身は、①教育委員会から教育長の任命権や指揮・監督権限を奪い、教育委員長と教育長を一本化し、それを首長が直接任命する、②首長と教育委員会で組織する総合教育会議を設置し、首長が教育の振興に関する「大綱」を策定するというものだ。

異議あり安倍改革

青木 「子どもの権利・教育・文化全国センター」で全国の教育委員からアンケートをとったら、約7割の方が安倍内閣の「改革」に反対でした。さらに首長が教育長を罷免する要件を拡大することにも反対52%で、賛成の27%を大きく超えています。

このアンケートから浮かび上がってくるのは、真摯に教育に向き合っている教育委員の姿です。安倍内閣がめざす「改革」を支持するものではありませんでした。

また、右翼的な森田県政のもとでも、戦前の歴史観にたった「新しい歴史教科書をつくる会」系教科書が公立学校では一切採用されていません。ここにも教育委員会が学校現場の教師とともにある姿が見えます。

今回の「改革」は、大津市のいじめ問題で教育委員会が批判されたことを利用した、権力の教育への介入といえます。いじめ問題は学校の問題であると同時に県政・国政の問題であり、解決につながる学校の中の協力・共同をどう作るかなどの議論こそ求められます。

むしろ今は、住民の意志で統制する教育委員会の機能と役割を、学校現場や住民の立場から、どう強めるかが大切になってきます。また国や自治体の責務は、子どもたちが学ぶ条件整備です。私たちは皆さんと力をあわせて、この法案の廃案に向けて取り組んでいきます。

子どもたちが望む学校--様々な立場から意見を県政に

教育関係者、父母らが熱心に論議したタウンミーティング

県の教育委員会に県民の意見を反映させようと、「第6回千葉の子どもを幸せにする教育タウンミーティング」(主催・同実行委員会)が、“子どもたちが望む学校”をテーマに千葉市でおこなわれた。

鳥塚良和さん(高校教員)は、「子どもの貧困と高校無償化」と題して発言。県立高校ではエアコンは保護者負担で設置されているが、家庭の経済力が弱い子が多く通う高校への設置は遅れているという。
県の教育委員会は奨学金を受けている生徒数の実態を把握していない。民主党政権で無償化された授業料は、自民党政権になり原則有償と変わったが、減免を求める生徒は多く、事務室がパニックになるほどだ。無償化に戻させる運動が求められると語った。

浦田操さん(82歳)は、戦中に子ども時代を過ごした体験を語った。戦争中の大変ななかでも音楽が心の支えになった。音楽や美術のような芸術を軽視しないでほしいと訴えた。

小幡明梨さんは平成4年生まれ。自らの学校生活を振り返り、常に「普通でなくてはならない」と思いつつ生きてきた。自分がイジメのターゲットにならないためには、他の生徒と横並びでイジメに加わるしかなかったと体験を語る。社会や教育のシステムが、「普通」以外認めないようなあり方は問題だ。それぞれの人の自由な生き方、個性を尊重する必要があると語った。

橋本孝子さん(中学校教師)は、3年生の担任として進路選択で傷つき悩む子どもたちの姿を目のあたりにしてきた。学校では子どもたちの将来と向き合い、夢を語りながら進路指導をする。ところが多くの有名塾では、「もっと偏差値の高いところをめざせ。低レベルの学校へ行ったら人生終わり。7校くらいは受験に挑戦しなさい」と指導される。塾は自らの評価を上げる手段としてしか考えていないと批判した。
教員は授業だけでなく、子どもたちの心まで見つめた指導をしたい。教員を増やして、教員の間で指導の共通理解がもてる職場にしたいと語った。

小林愛さんは、地域の親と先生で子どもの教育懇談会を年に3回開いている。放射能の問題、いじめの問題や子どもの発達の問題、国がすすめる「教育再生」の問題など、幅広く話し合える場としている。そのなかで孤立しがちなお母さんたちも安心でき、お互いが学べる場になっていると報告した。また、子ども会づくりの経験から子育てのネットワークの必要性を述べた。

浅間基秀さんは、教科書採択について発言。県内では子どもを一番良く知る現場の教員の意見を反映して採択される傾向があるが、東京、横浜などでは現場の声を無視し戦争を賛美する教科書を採択した。たくさんの人が、展示される教科書の実物を見て、意見を上げてほしいと訴えた。

不登校の子が通うフリースクールに関わる方は、「学校関係者は親の要望をよく聞いてほしい。子どもへの過剰な期待が子どもたちを苦しめている」と発言した。

森田知事がすすめようとしている道徳の教科化について、「今まで5~6時間目にあった道徳の時間が、しっかりやれるようにと、午前中に設定された」などの報告があった。

<ページトップへ>