ちば民報レポート

保健室の子どもたち18 得意なパソコンから

◇養護教諭サークル 中学校 あまちゃん

  ちば民報 2014.12.21

「相変わらず漢字は苦手なんですよ」「でも、得意のパソコンを生かして何とか頑張ってます」。

時折、卒業後の様子を電話で教えてくれる翔君(仮名)のおかあさん。翔君は、発達障害の診断を受け通院をしている子だった。

小学校では不登校気味で、母親が付き添って通ってきていた。家を出るまで、朝は毎日戦争だったと言う。クラスでは友だちとのトラブルがしょっちゅうだった。カッとなって、イスや机を投げて教室中をメチャメチャにしたこともある。「小学校からの同じ子が来ないので、少しは変わってくれるのではないか」と思って、中学校は自由選択制で選んだ学区外の学校にした。新しい環境への期待を抱いて入学してきたのだ。

入学当初、翔君は毎日のように遅刻し、朝は校門前を行ったり来たり。ようやく昇降口にたどりつくと、上がり口に座って、靴ひもを解いたり縛ったりをくり返す。こうして一時間目は終ってしまう。

「ババアがいけないんですよ。朝から文句ばっかで…」と、母親への悪口攻撃をくり返す。教室への階段も一歩を踏み出せず、壁に背中をつけたまま動かない。こんな光景をどれだけ見てきただろう。それでも、一年生の途中からは何とか教室に入るようになってきた。

そんな翔君が、いつの間にか保健室に顔を見せるようになった。放課後の保健室は、委員会活動のため残っている生徒たちでいつもにぎやかだ。そのまた友人達まで交えて、おしゃべりしながらの時間が続く。

文化祭の舞台発表が終わり、その後は、ちょっとした取り組みを計画。クラスで発表できる紙芝居作り、朝会での発表企画も考える。「インフルエンザ予防を歌にして呼びかけよう」「寸劇をやろうか」「うがい、手洗いは実演しないと」等々…。豊かな中学生の発想にはいつも脱帽!アイデアを出し合っての活動は楽しそうだ。

そんな様子を翔君は、遠くからいつも黙って見ていた。決して輪に入らずに…。ある日、みんながパソコン操作でつまずき困っていた。誰も解決できない。その状況をみていた翔君は、パソコンに近づくと、キーボードを打ちながら、いとも簡単に解決してしまったのだ。思わず拍手!

これを機に、翔君は自然にみんなの輪に入っていった。めったに見せることのなかった笑い顔、笑い声。「翔君も笑うんですね~」いつも漢字を教えるのに苦労している、国語科の先生の声。

二年生になると、ごく自然に保健委員に立候補し、後期からは委員長に。得意なパソコンを駆使した活動で大活躍し、後輩にも頼られる存在になっていった。

友だちの中で、確実に自分の「居場所」をみつけ自信をつけたのだ。3年間で大きく成長した翔君。自分らしさを伸ばせる環境で、更に大きく羽ばたいて欲しい。

また、お母さんからの電話が楽しみだ。

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