「戦争する人づくり」阻もう=千葉県教委の教科書採択介入

しんぶん赤旗 2015.6.9

みわさだのぶさん

「教科書と教育を考える千葉県民の会」代表、千葉大学名誉教授三輪定宣(みわさだのぶ)さん(77)

千葉県で今年度、特定の日本史教科書(実教出版)の使用を決めた県立高校10校の校長に対して、県教育委員会が授業内容を報告させる「事務連絡」を発出しました。これに抗議し「日本史授業の監視・統制と教科書採択への不当な介入を許さない声明」を発表した「教科書と教育を考える千葉県民の会」の代表で千葉大学名誉教授の三輪定宣さんに聞きました。

「事務連絡」は、実教出版の教科書を採択した学校に対し、「国旗・国歌」「第2次世界大戦の犠牲者数」「南京事件の犠牲者数」を扱う授業の計画を提出させ、実施後に授業の内容や、参観した管理職者の氏名を報告するよう求めています。

権力盾に圧力

重大な違法行為です。検定に合格した教科書であれば、どれを採択するかの権利は学校にゆだねられています。教育行政機関が権力を盾にして介入・干渉・監視することは許されません。

2014年度、千葉県で実教出版の教科書を使っていた県立高校は50校ありました。しかし同社の教科書が「日の丸・君が代」について「アジアに対する侵略戦争で果たした役割」や「公務員への強制の動き」にふれていることを理由に県教委は「生徒に混乱が生じないように」するよう指示。校長会、教頭副校長会、教科書選定協議会などで5回も徹底を図りました。その結果、同年度に同教科書を選定した高校は12校へと激減。さらに、

その12校に詳細な指導計画と追加資料の提出を求める連絡が出され、2校が選定をとりやめ、最終的に同教科書を選定したのは10校になりました。その10校が提出した指導計画や追加資料に対しても、県教委は書き換えや資料の変更を求めました。

そのうえ、すでに来年度用の教科書採択にも同様の圧力を加えています。

侵略戦争を美化する「日本会議」所属の県議が12年、13年に同社の記述を攻撃し、14年には授業の監督を求めてきました。県教委の介入は、この要求に屈した結果です。

過去に日本が犯した侵略戦争の事実に正面から向き合うことは、「自虐」ではありません。二度と戦争はしないと決意してこそ、本当の意味での誇りを取り戻せます。過ちを正当化し、開き直る歴史観を子どもたちに押し付けることは、健全な人間の成長をゆがめます。

戦前と戦争は、教室から始まりました。国のため、天皇のために、個人の尊厳と命を投げ捨てることが美しいのだと教えられた子どもたちが、戦場ヘ送られました。いま再び、安倍政権による「戦争する国づくり」と一体に、「戦争する人づくり」が狙われています。県教委の介入はこの動きと軌を一にするものです

力合わすとき

子どもたち一人ひとりが人間として大切にされ、幸せに生き、夢や希望が持てるように、ゆき届いた教育の条件や環境を整えることを求める全ての人たちが力を合わすときです。

7月12日に千葉市内で「戦争は教室から始まる」をテーマにシンポジウムを開きます。これを一つの節目にして「戦争する人づくり」を阻止する連帯の輪を千葉から発信していきたいです。

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