「給付型奨学金」実現を・高すぎる学費+広がる貧困

しんぶん赤旗 2016.11.29

返済不要の給付型奨学金の創設をめざす運動が注目されています。26日、千葉県弁護士会は運動団体の代表や学生らによるシンポジウムを 開催。開会所属の弁護士で奨学金問題対策全国会議の共同代表、伊東達也さんは「もっと現状を知らせよう」と呼びかけました。

「押しつぶされる」

シンポで私立大学3年生の戸塚優さんは「先の見えない不安に押しつぶされそう」と発言しました。兄弟が3人おり、両親が働いても学費が補えないため奨学金を借りています。その返済予定額は500万円。卒業後、毎月3万円を返します。切実な話に会場は静まり返りました。

「奨学金がテーマの講義では受講生全員が真剣になる」と切り出した、中京大学教授で同会議共同代表の大内裕和さん。同大学では、建物の4階で開かれる奨学金説明会に学生が1階の外から長蛇の列をつくります。「全国どの大学でも、奨学金説明会は文化祭より学生を集めます」

なぜこれほど学生は奨学金に頼るのか。高学費と貧困が原因です。学費は上がり続け、国立大学の授業料ですら年約54万円の時代です。2014年度、学生の出費に占める学費は64%、対する生活費は36%です。

一方、保護者の年収は1997年の467万円から2014年に52万円もマイナスに。月10万円以上の仕送りを受ける学生の割合が95年の62%から14年には29%へ激減。5万円未満は7%から24%に増えました。

シンポで、大内さんは学生の困窮ぶりについて「300円台のメニューをそろえる学生食堂はガラガラ。300円の食事ができないほど学生は貧しい」と話しました。

結婚に、ためらい

多くの学生は生活費を稼ぐためにアルバイトをします。なかには学業より仕事を強制する雇用主も─。それを大内さんは「ブラックバイト」と名付けました。

奨学金の受給率は51%、学生の2人に1人で過去最高となりました(14年度)。

受給しない学生も人ごとではありません。なぜなら将来の結婚相手の半数は奨学金の返済者だからと、大内さん。結婚をためらい悩む若者は多く、「奨学金問題は少子化につながる社会全体の問題だ」と強調しました。

同会議の事務局長、岩重佳治さんは奨学金返還請求訴訟を手がける弁護士です。学生が「将来の夢は奨学金の完済」と語るのを聞き絶句したといいます。

無利子の奨学金制度に有利子が加えられた84年。その後、事業者が育英会から日本学生支援機構に替わり、銀行資金が投入され、現在の奨学金制度は「金融事業」になりました。

貸与数も事業費も受給要件が厳しい無利子が横ばいなのに、有利子の方は2000年代に激増します。「銀行と債権回収会社のもうけのために奨学生は苦しめられている」と岩重さん。

来年度から所得に応じて返済額を決める制度が始まります。岩重さんは「いまは年収300万円以下だと無期限で返済が猶予されるのに、新制度は収入ゼロでも月2000円の返済を求められる」と指摘し、制度の抜本的な改善にならないと批判します。

千葉大学名誉教授の三輪定宣さんは、国際人権A規約にある無償教育の導入条項を、運動によって日本政府に批准させたことを紹介。返済する必要のない給付型奨学金の実現を訴えました。三輪さんは「国民のための奨学金制度を拡充し、無償教育をすすめる会」会長です。今年の参院選で給付型奨学金が争点の一つとなり政府も検討しだしたことをあげ、「本物を実現するため幅広く共同しよう」と力を込めました。

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