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ちば経済提言―千葉県経済の活性化をこう進めます

2016年6月 日本共産党千葉県委員会

はじめに

安倍第2次政権がはじまって3年、アベノミクスなる経済政策の破たんがはっきりしました。

大企業の内部留保は30兆円増で301兆円になり、上位40人の超富裕層の資産は2・1倍化15・4兆円に達しましたが、働く人の実質賃金や家計消費は減り続けています。安倍首相も「予想以上に消費が落ち込み、予想以上に長引いている」と認めざるをえませんでした。

この結果、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、2017年の日本のGDP成長率はマイナス0・1%です。他国では、アメリカ2・5%、ユーロ圏1・6%、中国6・2%、インド7・5%、ロシア0・8%のプラス見通しであり、日本経済の変調ぶりが際立っています。

大企業がもうかればやがて家計にも回ってくるという、「トリクルダウン」政策がまったくの妄想であり失敗だったこと、消費税大増税路線がGDPの6割を占める家計消費を冷え込ませたことは明白になりました。格差と貧困の広がりが、日本経済の活力を奪っています。

この根本的な解決のために日本共産党は、「3つのチェンジ」を呼びかけています。①税金の集め方を変える――消費税増税は中止し増税は大企業・富裕層から、②税金の使い方を変える――社会保障と若者への投資を最優先に、③働き方を変える――老いも若きも安定して暮らせる雇用、という3つのチェンジです。

この転換を、千葉県でどう進めるか。日本共産党の浅野ふみ子は参議院選挙に当たって、千葉県経済の活性化をはかるために以下の提案をおこないます。

1、経済・産業政策の根本転換が必要

1)極めて深刻な千葉県経済の疲弊

千葉財務事務所の今年1~3月期の県内法人企業景気予測調査では、景況判断指数は大きくマイナスとなりました。マイナスは8期連続で、とうとう、大企業もマイナスに転じました。身近な商店街の空き店舗率も急増しています。大型店の出店もあり、県内の商店会会員数は、2010年から14年で13・5%も減少しています。

地域経済の悪化の要因について、自治体の首長は「高齢化」(67・4%)、「地元企業の衰退」(50%)、「地場産業の衰退」(47・8%)、「商店街の衰退」(45・7%)と見ています。県内事業所数の9割を占める中小企業は、この3年間で8%、9000社も減少しました。

とりわけ深刻なのは後継者不足です。帝国データバンク調査では、14年中に「休廃業・解散」した中小企業のうち、76・6%が「後継者なし・未定」でした。

地域住民も、業者も、自治体も、「何とかしなければ」という思いを強めています。

2)旧態依然とした財界の要求と自治体

千葉県経営者協会の2015年度の千葉県への政策要望は、成田国際空港の機能拡大と主要幹線道路の建設促進が中心です。「地域経済活性化策」もありますが、その中身は、東京五輪に向けたとりくみ強化や企業の助成に重点が置かれています。「観光振興」では、外国人観光客対策が主で、カジノ施設中心の統合型リゾート(IR)まで要求しています。

千葉県「総合計画」の「経済の活性化と交流基盤の整備」でも、成田空港の機能充実や外国人誘客、アクアラインと圏央道の重視、企業立地などがずらりと並ぶばかりです。「中小企業の経営基盤強化」や「雇用対策の推進と産業人材の確保・育成」などの項目もありますが、情報の提供や発信にとどまるものです。

いっぽう、破たんした「呼び込み型」「開発優先型」の産業政策が、あちこちで進められようとしています。茂原市や袖ヶ浦市の工業団地の再募集、県や千葉市、成田市のカジノ計画などです。JR京葉線の新駅設置構想も、県企業庁がイオンモール開業を受けて再起動させました。

こうしたもとで農村部を中心に、「これまでの施策の延長では先が見えない」と、地域固有の資源を生かした独自の施策をとる自治体が増えています。こうした「新しい流れ」を励まし促進することこそ重要です。

3)中小企業の要求をリアルにつかんで

千葉県中小企業家同友会の2015年「政策要望項目」では、「新たな仕事づくり」や当面の資金繰り・人材確保支援、中小企業の現状と課題の把握、中小企業の仕事につなげる省エネ・創エネ、消費税増税にともなう影響の把握と対応などが並んでします。

これらを正面から受け止め、商品開発や販路開拓への支援と人材育成、学生と中小企業のマッチング支援、経営支援の専門家の派遣、制度融資の支援、公契約条例による下請け・労働者保護などこそ推進すべきです。「中小企業は地域の経済発展にどう寄与するかを考えている」「100億円売り上げる大企業より、1億円売り上げる中小企業100社を」といいます。地域とともに発展する企業をどう育てるかが、要中の要です。

そのためにも、地域の全事業所調査でニーズを細かくつかむことが大切です。墨田区では5年ごとに悉皆調査をおこない、とりくんだ職員が小規模事業者の役割の重要性を実感し、産業施策を策定する大きな力になっています。東大阪市でも、アンケート調査で事業所集積による強みや「ものづくりネットワーク」の重要性をつかみ施策化しています。こうした全国の努力に学ぶべきです。

4)地域循環型経済政策を重要しよう

いくら企業誘致を進めても、そこで調達する原材料を域外に頼ったり、上がった利益が東京に吸い上げられては、地域の底上げにつながりません。

京都大学大学院・岡田知弘教授の岐阜県多治見市での調査は示唆に富みます。東京に本社をおく大手X社の電気機械工場の場合は、先端施設のため雇用は少なく、市外からの通勤者が多い。一方、地元の陶磁器産地では、X社の10倍の常用雇用があり、地域で分業しているため関連事業所も多く、地域内での経済循環が顕著に見られるというのです。

長野県栄村が第3セクターでつくった振興公社は、食材や商品、労働力をなるべく地域内でまかなうようにし、村内調達率は70%にのぼるといいます。異業種交流を強める大阪のナニワ企業団地協同組合は、共同受注チームをつくって仕事を回し合い、雇用を拡大しています。

2、地域の活性化に真に生きる「9つの柱」

1)雇用の確保と労働条件の改善

日本経済を底から温めるためには、まず何よりも雇用の安定と改善が必要です。そのためには、最低賃金を抜本的に引き上げ、異常な長時間労働などブラックな働かせ方を厳しく規制することが求められます。あわせて、千葉県でもすぐにできることに着手します。

一つは、雇用の7割を占める中小企業の労働条件引き上げのため、官公需の改善に手をつけます。野田市が全国初で導入した公契約条例によって、施行後、受注企業では年間21~25万円の賃上げになり、官製ワーキングプアの解消につながっています。すべての自治体で公契約条例の導入を進めるとともに、国に公契約法の制定を求めます。

もう一つは、自治体職員の非正規化に歯止めをかけることです。2012年の自治労調査では、非正規職員の比率が33・1%となりました。平均時給の最多層は800円台で、平均月給の最多層は14万~16万円です。「公」の仕事を委託する指定管理者では、非正規職員が7割を占め、うち6割は年収100万円未満となっています。自治体での職員の非正規化をやめさせ、正規化を支援します。

2)中小企業への支援を抜本的に強める

中小企業を千葉県経済の「根幹」にふさわしく位置づけ支援を強めます。とくに、下請け取引の適正化のため、元請けへの立ち入り調査や改善指導を強化します。また、販路拡大や後継者育成への支援を強めます。国も県も、予算を抜本的に増やし、中小企業への直接支援を拡充します。

秋田県が導入した住宅リフォーム助成制度では、4年間の補助総額の24倍、1626億円もの経済波及効果がありました。受注額の29%は個人事業者で小規模企業の支えになっています。いすみ市でも助成金額の13・3倍をこえる経済波及効果がありました。国の「日本再興戦略」では、2020年までに中古住宅のリフォーム・流通市場が倍増するとしており、助成にとりくむ自治体を交付金などで応援します。

商店街と小売店の振興が重要です。“買い物弱者”対策として、花見川団地の商店街振興組合による送迎用三輪自転車や、市原市や印西市、大多喜町などいくつかの地域での移動販売車など、努力がはじまっています。また、群馬県高崎市や我孫子市などでは、商店の改装・改修への助成制度が歓迎されています。こうしたとりくみを支援します。

フランチャイズチェーン(FC)加盟店への支援も重要です。FC業界は、利益の多くが本社に吸い上げられますが、加盟店は地域で納税し地域社会の一員となっています。災害協定を結んでいるところも少なくありません。FC本部の横暴から、加盟店を守るための施策を具体化します。

3)社会保障を産業政策の柱にすえる

格差と貧困が広がるなかで、介護施設の待機者や保育所の待機児童をなくすことは、待ったなしの課題です。そして、社会保障を抜本的に充実することは、国民の間に安心感を広げ、消費を喚起することにつながります。

加えて、社会保障関連の経済波及効果は極めて高いものがあります。08年の厚生労働白書によれば、社会保障の「総波及効果」は全産業平均より高くなっています。「雇用誘発効果」は抜群に高く、「介護」で1位、「社会福祉」3位、「保健衛生」8位です。

県内の特別養護老人ホームの待機者数は、軽度者排除のなかでも約1万3908人(16年1月)もいます。待機者を解消するためには、200か所程度の特養ホームの設置が必要です。福祉医療機構の9割融資制度もあり、公有地を適切に提供すれば、大きな自己資金がなくても開設できます。

また「男女共同参画白書」によれば、保育所が不十分なため働けない女性が455万人もいます。千葉県の待機児童数は国基準でも2667人(15年4月)。“隠れ待機児童”は4倍程度といわれており、安心して子どもを託せる認可保育所を一気に100カ所以上整備することが必要です。

これらの拡充は、地域の建設業者の仕事と雇用をつくり、地産地消の推進にもつながります。あわせて保育士や介護職員の処遇改善に全力でとりくみます。

4)大型事業偏重から地域が求める事業に転換を

巨費を投じた千葉ニュータウン開発、かずさアカデミアパーク、つくばエクスプレス沿線開発などは、採算が取れないまま重い借金を残しています。今後も、利水上も治水上も必要のない八ツ場ダム、採算の見通しのない巨大道路や大型港湾に湯水のように税金を注ぐ計画ですが、その恩恵のほとんどは大手ゼネコンに回り、地域経済への効果は極めて限定的です。むしろ赤字補てんのため貴重な税金が失われることになっています。

地域の中小企業がうるおい暮らしの役に立つ公共事業への大転換をはかります。公共事業の主力を、防災・減災や生活道路の整備、公営住宅の建設などにシフトさせます。とくに千葉県内の橋梁やトンネルの老朽化対策は、国土交通省の14年度点検で「健全」が4割以下とたいへん遅れており、最優先で進める必要があります。

国も、老朽化・耐震化対策や長寿命化改良事業に手厚い予算をつけていますが、技術系職員がまるで足りません。2年前、学校施設の耐震化が遅れていた船橋市は、技術系職員が少ないことを理由の一つにあげていました。積極的な職員の配置と研修にとりくみます。

県内の住宅の耐震化が遅れています。5年間で耐震化率は2ポイントしか伸びず、改修が必要な住宅は39万戸にのぼります。耐震診断や改修への助成を充実させ、地域の建設業の仕事を増やします。

5)農林漁業を基盤に付加価値を生み出す

農林水産省の調査では、農漁業の第1次産品生産額10・6兆円にたいして、最終消費額は73・6兆円と7倍にふくれあがります。加工・流通・販売を地域で担えば、巨額の付加価値が地域に落ちます。この点で、帯広市の経験は重要です。94%が玄麦のまま出荷されていたのを、市が支援して小麦粉に加工し、パンやパスタの製品開発と販路拡大にとりくみ、一大ブランドに育て上げました。

千葉県の2012年農業産出額は4153億円で、漁業産出額も247億円あります。これを県内で生かしきれば、最終消費は3兆円を超えます。農産物直売所はセブン・イレブンの店舗数を上回っています(05年農業センサス)。この強みを生かして、農産物加工と流通への支援、観光農園や農家レストラン、民宿での活用などを進めます。ちなみに、茂原市がつくった直売所「ねぎぼうず」は、毎年2億円を売り上げています。

2010年に公共建築物等木材利用促進法ができ、低層の公共施設は原則として木造とすることになりました。山武市が、地元産木材による木造防災備蓄倉庫の建設をはじめました。費用は金属製の1・5倍ですが、耐用年数は10年程長くなり、林業振興や良好な景観に資するものです。CLT(直交集成材)の開発・普及や木造仮設住宅なども重視すれば、大きな経済効果が見込めます。

環太平洋経済連携協定(TPP)による影響額は、13年3月の県試算では1000億円を上回りました。県内農業を壊滅させるTPPからの撤退を求めます。

6)地産地消のエネルギーへの転換

千葉銀行系列の千葉経済センターが、「千葉県における新エネルギーと今後のあるべき姿」をまとめています。このなかで、再生可能エネルギーの開発推進は、首都圏で「最も可能性が高い」としています。

そのさい、メガソーラーなど巨大施設では、富は東京に集中して、利活用をふくめた恩恵が地域を循環しません。再生可能エネルギーを推進するさいに大切なのは、▽地域固有の特性を生かす、▽ローテク技術で作れる、▽小型・分散型で数多く設置する、▽開発・製造、保守・管理を地域が担える、などを基本にすえることです。地域の企業がどんどん参入できるよう支援します。

南房総市は地域資源再生課を設置し、自然エネルギーを生かすとりくみを推進しています。太陽光発電では、小学校跡地に地元業者が設置し、太陽光パネルの販売・設置の会社も立ち上げました。木質バイオマス事業では薪ストーブを普及し、森林組合が間伐し市有地で加工したものを施設園芸の暖房にしています。これらで、約20人の雇用を生み出しました。

「ソーラーシェアリング」(営農型太陽光発電)、バイオマス利用(木材チップ、チップボイラー、メタン製造、木質断熱材など)の推進、中・小型の風力・水力発電施設の重視、自然エネルギーと組み合わせる蓄電池の開発・普及を推進します。これらは、多岐にわたる中小企業の技術を生かすことになります。

香取・成田市や睦沢町では、自治体が地域電力会社を設立しました。こうした努力を応援します。

7)移住支援や郡部の地域おこし

若者の「田園回帰」がいわれています。14年の内閣府調査では、20歳代男性の農村地域への定住願望は47%にのぼります。千葉県の持っている産業や環境をフルに生かせば、地域おこしは十分に可能です。

帝国データバンクの「地方創生に対する企業の意識調査」では、「まず第1次産業が元気を取り戻すこと」など、地域の産物を生かすことを求めています。政策課題では、若い世代への支援策がのきなみ上位です。内閣府の「地域の経済2014」でも、郡部の人口増自治体は、住宅費補助や子どもの医療費助成、保育の充実などが重要だったとしています。自然環境と歴史文化的資源を生かしたとりくみの重要性も指摘されています。

企業呼びこみ型から地域資源活用型へ、地域おこし政策の転換を応援します。館山市への移住支援を手がけるNPO法人「おせっ会」が移住体験ツアーや空き家バンク、働き方セミナー、農業実習などを通じ、5年間で約130世帯の移住を支援しました。うち7割強は子育て世代です。市も誘致企業の身勝手な撤退を機に、誘致オンリーから「中小企業の進出、個人の起業、NPOの活動をきめ細かく支援し、雇用と活性化を図る」ことに転換しました。

鋸南町では、小学校跡地に都市住民との交流施設を「道の駅」と一体に設置しました。簡易宿泊施設や農水産物直売所、貸会議室、入浴施設などです。白石町長は、「零細農家の中から売り上げ1000万~2000万円プレーヤーをつくりたい」といっています。

こうした地方自治体や住民の努力が生きるように支援します。

8)まちづくりのあり方を根本から見直す

いま都市部でも農村部でも、 “買い物弱者”が生まれる一方、中心市街地がシャッター通り化するという事態が進んでいます。土地利用を農地、工業地域、商業地域、宅地に画然と分けてきたやり方が、高齢化と低成長の下でかみ合わなくなっています。

商業施設や働く場、住宅、公共施設が渾然一体とし、通勤も買い物も公的手続きも、医療・介護も、徒歩や自転車で気軽に行けるようなコンパクトなまちづくりを、住民が主体となって中学校区単位程度にすすめます。地方創生でいう「コンパクトシティ」、都市機能を中心部にあつめ、道路とネットで周辺部と結ぶという手法とは違うものです。

群馬県中之条町と東京都健康長寿医療センター研究所が、健康寿命の延伸のため体力に応じた中強度の活動が欠かせないことを明らかにした、「中之条研究」が注目されています。同町には34ヵ所の保健センターや公民館などがあり、そこを活動拠点とした運動で効果を上げ、医療費抑制にもつながりました。公共施設の統廃合ありきでなく、身近な地域のコミュニティ機能を維持できるよう、必要な施設は存続させ活用することを重視します。

9)企業に社会的責任を果たさせる

茂原市で、「地域経済の活性化と雇用の確保」という名目で、県と市から90億円の立地補助金を受けたIPS‐αが身勝手な撤退をおこないました。後を継いだパナソニックもジャパンディスプレイも、雇用の確保に責任をもたない対応でした。館山市でも、市から支援を受けていた台湾の半導体受託生産大手の子会社、ユー・エム・シー・ジャパンが一方的に会社を解散し、従業員570人家族1500人を路頭に迷わせる事態が起きました。

そもそも、企業誘致のために立地補助金の手厚さを競うことは時代遅れです。経済産業省の調査でも、企業が立地に当たって「最も重視すること」で、「補助金」を上げた企業はたった1・95%。外から企業を引っ張ってくる発想はもう切り換えて、地域に現にある企業や人材、資源を生かした産業政策に切り替えます。

また、臨海工業地帯の大企業で、労働者の死亡事故や下請けいじめ、環境破壊などが相次いでいます。これらの企業の横暴勝手なふるまいは、企業の社会的責任からいって許されるものではありません。進出してきた企業が、地域経済の底上げや雇用の確保と安定に貢献することを強く求めます。