政策・提言

茂原市の地域活性化をどうはかるか

2012年7月13日 平井一隆

1、茂原市の現状とその要因

①衰退する茂原市の現状

*4月1日時の人口が、10年の9万3139人から11年の9万2129人に、1010人、1・1%の減少という異常な数字。06年から10年の年間平均の減少率は0・24%だった。11年の転入・転出による社会減は約500人。ところが、市は「詳細な分析はおこなっておりません」(6月議会)

*市税収入は、08年の144億円をピークに、12年度の見込みは121億円と、23億円ものマイナスに。

*市民生活は、10年の国保滞納による差押さえ件数が、世帯比で県内7位(09年が県内4位)と疲弊。

②最大の原因は大企業の身勝手な撤退

*05年に誘致した「IPSαテクノロジ」が、パナソニックに譲渡され、11年末には1300人いたパナソニックの液晶ディスプレイ工場が撤退。この間に、労働者の非正規化や労働条件切り下げが連続した。

*ハローワーク茂原によると、現在の有効求人倍率は0・4台で、「今後0・2程度まで下がる可能性がある」。「離職」による国保への加入届け出数が、12年3~5月で1804人。11年の1187人から617人も増加。

③地域の産業、農業や中小企業の疲弊

*中心市街地(駅前、榎町、昌平町)の店舗数は、1980年に208店あったのが、現在111店に。07年の全市の小売業は875店で、04年から9・8%もの減少、販売額も5・5%減少。

*工業の事業所数の変化を規模別でみると、300人以上は変わらず、4~29人の事業所が24%減少。従業者数は11%減少。

*20年間で耕地面積は65%に減り、とくに畑は半分に。農家戸数は1371戸で、82%が兼業農家。農家数は、20年で半減。経営規模別では、3ha以上の農家が1・5倍に増え、1ha未満の農家が半分以下に。

④一貫した市の産業政策のゆがみ

*市長は6月議会で、「圏央道の開通による地域への波及効果」「物づくりに資する(ために)、企業の誘致をはかる」と、破たんした「呼び込み型」しか頭にない。

*住宅リフォーム助成などの要求には、「お金がない」と目先の損得しか考えない。

*3年前の「みずほ総研レポート」でも、「産業・企業振興策としての工場誘致は失敗続き」、「旧来のスキームによる中心市街地活性化は大苦戦」。

*昨年の千葉財務事務所の首長ヒアリングで、地域経済が「やや悪い」61・1%、「悪い」22・2%。要因として「商店街の衰退」(66・7%)、「地元企業の衰退」(53・3%)、「地場産業の衰退」(46・7%)。

2、茂原市の活性化をどうはかるか

①雇用の確保と消費の拡大

*非正規雇用は全国で38・5%。千葉県はもっとひどく52・5%が非正規。女性は4人に3人。この5~6年で急速に非正規化が進行。このもとで、年収200万円以下が、06年以降全国で1千万人超を続けている。

*これが、消費の委縮を生み経済の活力を奪っている。家計消費はGDPの約6割を占め、この動向が経済を大きく左右する。また、現役世代が国保になだれを打って流れ込み、市の国保財政にも大きな悪影響。

*しかし市の姿勢はどうか。保育士でいうと、私立は正規が51人で非正規が12人(19%)なのに、市立は正規が65人で非正規が60人(48%)という異常さ。

*大企業の非正規化に抗議し正させること、官製ワーキングプアを生まないこと、公契約条例などで労働条件を向上させることが重要。

*消費の冷え込みで小売業は縮小しているとはいえ、なお茂原商圏の吸引力は153%と高く、県内3位(ただし大型店の占める率が84%と最も高いが)。家計を温め消費を拡大すれば、元気を取り戻せる。

②中小企業対策

*市が「金がない」とやろうとしない住宅リフォーム助成は、助成金額の10数倍をこえる波及効果。宮古市では一昨年、3500件で3億5千万円を予算化。これを使いきれば、7分の1世帯がリフォームを行うことになる。この結果、建設・土木などの求人倍率が、半年で0・52から1・09に伸びるという即効性があった。

*市は、総務省の「がんばる地方応援プロジェクト」を申請したが、その中身は企業立地補助金だけ。プロジェクトには、地場産品発掘・ブランド化や、安心・安全なまちづくり、少子化対策などのメニュー。空き店舗対策や中小企業による地域資源を活用した事業、住宅リフォームや家具転倒防止助成などが可能だった。

*この3月、民家の耐震化への補助事業や住宅リフォーム助成が一気に広がったのは、国の「緊急防災・減災事業」の補助金活用のため。そういう知恵が必要。

*市の入札制度の改善も重要。市川市では、入札の基準緩和、市内業者の保証金免除、総合評価方式、最低制限価格・失格基準などで、市内業者の受注件数が86%から94%、受注額で58%から68%に拡大。

③社会保障の充実

*08年厚生労働白書によれば、社会保障関連の「総波及効果」は産業平均より高く、「住宅建設」や「精密機械」を上回り、「通信」や「電力」の1・3倍。「雇用誘発効果」は、56産業部門で「介護」1位、「社会福祉」3位、「保健衛生」8位。介護給付を1兆円増やせば、約25万人の雇用。これは、「公共事業」や「住宅建設」の10万人を大きく上回る。

*「みずほ産業調査」(2012年)では、「(25年には)高齢者の健康・生活を支える医療・医薬、介護産業は合計で約50・2兆円規模と、07年度(22・6兆円)対比2倍強に」「介護職員数は07年の約117万人から25年には約212万人…毎年約5万人の新規雇用が必要」。

*しかし、茂原市の特別養護老人ホームの待機者は335人(12年1月)。要介護度4、5の方が165人もいる。特養施設は6カ所で定員は294人。待機者解消のためには新たに6カ所以上必要で、それだけで200人以上の雇用が生まれる。

*茂原市の医療費は国保分で79億円、後期高齢者で71億円。介護保険事業費は53億円。それぞれ、農業の租生産高を上回る規模。重要な産業であり、需要(住民の要求)もきわめて高いもの。地域活性化の柱として位置づけを高める。

*独立行政法人福祉医療機構は今年、特養などの施設建設の融資率を75%から90%に引き上げ。わずかな自己資金でつくれる。県の1ベッド400万円の補助も延長。市民ファンドを募って資金を調達するなど、「行政が音頭をとってつくる」ということも可能。

④農業

*農漁業の第1次産品は10・6兆円、最終消費は73・6兆円。加工・流通・販売を大手にまかせず地域で担えば、巨額の付加価値が地域に落ちる。茂原市の農業産出額は、06年で56・8億円なので、400億円近い価値を生み出す。

*国も「6次産業化をめざす」と、「6次産業化推進整備事業」で300億円の大型ファンドを立ち上げ、農業生産法人などへの長期無利子融資や半額助成をおこなう。県内では11事業者が認定され、米粉の焼き菓子、梨のジャムや焼き肉のタレ、保存料を使わないハム・ソーセージなどの事業が各地ではじまった。

*帯広市の経験は重要。「協議会」を設置し、40人のメンバーが74回の議論。当初は「悲観論」があったが、地域の良さや資源を「発見」。94%が玄麦のまま出荷されていた小麦を使って、パンやパスタの製品開発や販路拡大にとりくみブランドに。製粉工場の設置も展望。

*農産物直売所「旬の里ねぎぼうず」の年間売り上げは、毎年ほぼ2億円をこえ安定。しかし市は、2カ所目をつくることを検討したがうやむやに。他の直売所の現状をつかんでもいない。

*国の「農の雇用事業」や「緑の雇用事業」などが活用できないか、生産者や事業者と協力して。

⑤自然エネルギーへの転換

*食糧やエネルギーなど、暮らしに不可欠のものはブラックボックスにしないことが大切。そのためには、▽地域固有の特性を生かす、▽ローテク技術で作れる、▽小型・分散型で数多く設置する、▽開発・製造、保守・管理が地域で担えるなど、地域の事業所が作成・設置、維持・管理できるものに。

この点で、茂原市の事業所数、従業者数でウエイトの高い電気機械製造業が生かせる。

*茂原市には、00年につくった「茂原市 新エネルギービジョン」がある。問題はこれがまったく棚上げにされていること。新エネルギーの期待可採量は約4000億kcalで、市のエネルギー需要の約14%にあたる。うち、天然ガスが20%、太陽光発電が25%、太陽熱利用が27%、工場排熱が10%、中小水力が7%、バイオマスが3%。なお、賦存量はその300倍にのぼる。

*太陽光発電では、晴れの日が68%と多く、「太陽光発電や太陽熱利用において有利」、「全世帯のうち約81%が戸建て住宅であり…導入適正は高い」(ビジョン)といっている。ところが、民家への設置補助金は、わずか20件140万円。補正で10件70万円。

パネルメーカーによる寡占支配は崩壊。地元業者が参入できる補助制度や研修なども市ができる仕事。バッテリーに充電できる太陽光発電システムを開発した、東金市の「エコ・ライフジャパン」は有限会社。

*バイオマスの利用は研究や技術開発が必要。「田畑の比率が40%程度、山林の比率が15%以上あり、これらから発生するバイオマス資源の活用も有望」(ビジョン)。「バイオ燃料活用により地域活性化や雇用創出の効果が期待」「(耕作放棄地)活用できれば125万klのバイオエタノール生産が可能」(みずほ)。

*茂原市ならではの資源に天然ガスがある。ガス層は地下500mと浅く、メタン100%で不純物が含まれていない。CO²排出は少なく発熱量は高い。採取可能な埋蔵量は3500億㎥あり、現在の採取量なら700年分。「天然ガス量は、市内郡内ガス消費量の約3倍に匹敵…天然ガス網が整備されていることから、コージェネレーションや燃料電池の普及が考えられる」(ビジョン)。

小型のガスタービン・コンバインド発電を、市民の共同出資で、市内の電機・建設業者を使って建設する可能性もある。

*地中熱利用(外気との温度差をエネルギーに取り出す)の可能性も。ガス井戸は現在149坑、それ以外にかつて使っていたものは10坑以上あり、これを活用する。

11年度から地域再生可能エネルギー熱導入促進事業で補助対象となり、設置費用を民間3分の1、公共2分の1補助。年々100カ所前後増加。病院や介護施設で効果が大きい。都内の5階建てビルでは、熱交換機を75mまで8本入れ空調電力消費が49%に。

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