政策・提言

消費税増税に頼らない、社会保障充実と財政再建の道

2012年6月16日・富里後援会 平井一隆
題字は編集者の責任でいれました

広がる反対の声

民主党・野田政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税を2014年に8%、2015年に10%に増税する大増税法案を成立させようとしています。この計画にたいし、多くの国民から強い批判と怒りの声が広がっています。どの世論調査を見ても、やるたびに「反対」の声が増えている。「毎日」では、3月が58%、4月が60%。昨年秋ごろの賛成の方が多かった状況とは大きく変わりました。

しかもこの変化は、マスコミの猛烈な世論誘導に逆らったものです。3月30日に野田内閣が増税法案を出した翌日の全国紙の社説は、ひどいものでした。「やはり消費増税は必要だ」(朝日)、「民自合意に全力挙げよ」(毎日)、「首相はぶれずに突き進め」(日経)、まるで、「進め進め兵隊進め」、戦前の教科書みたいです。

マスコミのキャンペーンにもかかわらず、「反対」の声が広がっている。これには、はっきりとした理由があります。消費税が10%になったら、暮らしていけない現実がある。営業が立ち行かなくなる現実がある。

不公平な税負担率

年収に対する消費税の負担率をみると、年収200万円以下の方、いまや1040万人に上りますが、この層では5・3%と消費税率より高いのです。なぜかというと、仕送りをしてもらったり、貯金を取り崩したりして、年収以上に消費しているからです。貯金する余裕などなく、なんとか暮らしている。それが10%になれば、もうやっていけません。

中小企業の5割は「転嫁できない」

中小企業のみなさんはどうか。商工会議所など中小企業4団体が、「消費税が引き上げられたら、販売価格に転嫁できるか」という調査をやりました。すると、売上高1億円から2億円、かなり大きな業者ですが、それでも5割は「転嫁できない」と答えている。1000万から1500万の業者では71%が「転嫁できない」と言っている。販売価格に転嫁できなければ、もうけがなくても、自腹を切って税務署に納めなければならない。10%になったら、中小零細企業の廃業や倒産が一気に広がるでしょう。97年に3%から5%に上げたとき以上に、景気はどん底になります。

政治を変え、消費税増税に頼らない道を

ですから、現実をまともに考えたら、「絶対に増税は困る」と言うのが、多くのみなさんの気持ちなのです。増税をあおっている「読売」の4月調査でも、「増税反対」が57%でした。ところが、さすが「読売」、「財政再建や社会保障制度維持のために消費税率引き上げは必要ですか」と聞く。すると、55%の人が「増税が必要だ」と答えるのです。「増税は困るけれど、将来のことを考えたらなあ」とか、「自分の暮らしは大変になるけれど、孫子にツケをおわせたくない」。多くのみなさんが、そう考え悩んでおられる。答えを求めておられます。

この、揺れ動いている多くのみなさんに、しっかりと回答を示せるかどうか。圧倒的多数のみなさんに、「政治の姿勢を変えさえすれば、消費税増税に頼らない、別の道があるんです」と語りかけ、「なるほど、そういう道があるのか」と分かっていただければ、「増税反対」の声は、8割9割に広がるでしょう。二大政党がいくら密室で談合しても、マスコミが世論誘導をやっても、世論の広がりは止められない。そうすれば、今回の消費税増税をストップさせることは必ずできる。そのことは、いまの政治の枠組みを根本から打破する、そういう新しい道に踏み出すことにもなります。

昨日一昨日と、共産党は全国活動者会議という大きな会議を開き、今度の総選挙で、なんとしても勝利しようと意志統一しました。その展望はあるか。あります。いま多くの国民が、先が見えない閉塞感におちいっていますが、「こういう道がある」と展望が持てれば、その閉塞感は変革のエネルギーに転化する、と強調されました。

そういう構えと展望をもって、このたたかいにのぞんでいこうではありませんか。

消費税増税に頼らな「二つの柱」

社会保障の再生

では、消費税増税に頼らないで、社会保障の充実と財政再建を、どうやってすすめていくのか。日本共産党は、「二つの柱」が大事だと考えています。

第1の柱は、無理のない財源を手当てしながら、社会保障の再生と充実を段階的にすすめることです。段階的にと言っているのには、理由があります。自公政権から民主党政権にいたるなかで、社会保障はズタズタにされました。血が吹き出ている。血を止めて、傷口をふさぐ仕事は待ったなしです。いますぐつくれる財源で手当てをする。そのうえで、体力の回復、経済の成長を待ちながら、社会保障の充実と財政再建に向かう。と言っても、それは消費税ではありません。応能負担の所得税で、まかなっていこうということです。これが、だいたい20兆円規模のとりくみです。

国民の所得を増やし、内需主導の経済成長をすすめる

第2の柱は、国民の所得を増やして、内需主導の健全な経済成長をすすめていくことです。いま日本経済は、長期の低迷と後退に陥っています。それをそのままにして、その枠内でいくらやりくりしても出口は見えません。日本経済を、内需主導の健全な成長の軌道にのせてこそ、展望が開けます。

分かりやすいのは、国の借金の増え方です。借金の総額の増え方を見てください。増えてはいますが、欧米諸国と余り変わりません。ところが、GDP比、GDPと言うのは国の体力を表すものですが、その比率でみると、日本は明らかに突出しています。なぜか。GDPが増えないからです。名目GDPは、この15年間で1割も減っているのです。

竹中平蔵氏がおもしろいことを言っています。彼は、今度の増税には反対しており、民主党政権の何が間違っているか、こうのべました。「名目経済成長率を欧米各国並みの3~4%にしない限り、どんなに増税しても財政再建はできない。もし3%の名目成長が実現すれば、5年後の税収は10兆円規模で増えると考えられ、そもそも増税の必要がなくなってしまう」。私たちも、民主的な経済改革で、税収の自然増を10年間で20兆円程度見込んでいます。

「2つの柱」合わせて40兆円規模の改革をすすめよう、というのが、日本共産党の提案です。

社会保障の立てなおしは急務

<医療>高すぎる窓口負担

では、具体的にどうするのか。まず、ズタズタにされ、出血がひどい社会保障の再生、建て直しです。

医療についてです。国民皆保険と言われますが、窓口負担が高すぎる。民医連が、受診抑制で命を奪われた方の実例を発表しています。国民健康保険の方が多いですが、協会けんぽの方もおいでです。保険証はあっても、3割負担が重くて、お医者さんにかかれないのです。日曜日の朝のテレビを見ていると必ず、アヒルさんが出てきて「がー、が―」いっていますね。「健康保険だけじゃあ不安だ」というところにつけこんで、アメリカの保険会社がどっと参入しているのです。

ですから、窓口負担は、97年以前に戻して、現役世代は2割、高齢者は1割にしたい。本当はゼロにしたいところですが、緊急性ということでは、国保や地域医療の破たんへの手当ての方が、一刻の猶予もありません。

<医療>高くて払えない国保料

国保が高くて払えない方が、2割に上るというのは異常です。これを一人1万円、4人家族なら4万円引き下げる。これだけで4000億円かかります。また、地域医療の砦、公立病院の経営が苦しくて、次々と民営化や統廃合されている。診療報酬がこの間、2・7兆円も削られたからです。これらの手当てを急いでおこないたい。

<年金>許さない「支給額おおはば減」

次に年金です。自公政権時代に、保険料の引き上げや給付の削減、支給開始年齢の先送りをやった。「100年安心」と自慢したときから、たった7年です。さらにひどい改悪を押しつけようとしています。物価スライド、98年から10年までの物価が下がった分だといって、2・5%も引き下げる。それとは別に、マクロ経済スライドだといって、毎年0・9%引き下げる。3年たつと、1カ月分の支給額がとりあげられます。

高齢者の方にお聞きすると、「物価が下がっている実感なんてない」とおっしゃいます。その通りです。物価スライドのもととなっている消費者物価指数は、高齢者の実生活とはかけ離れているからです。この12年間で何が下がっているか。一つは情報機器です。パソコンなどはマイナス86%。家電製品もマイナス54%です。高齢者が買わないわけではありませんが、比較的縁が薄いものが極端に下がっている。じゃあ、日常欠かせない食料品はどうか、たった0・8%しか下がっていない。逆に、水光熱費は6%の上昇、医療費は13%の上昇です。98年の時点では、介護保険料・利用料などはありませんでした。こんな基準で、過去物価が下がったから2・5%削るなんて、とんでもないことです。

また、マクロ経済スライドというのが曲者です。これは、物価が下がらなくても、毎年下げましょうという仕組みです。計算の元となっているのは、たとえば年金の加入者数が減る、すると保険料収入が減るので下げましょう。平均年齢が上がっている、これは良いことなんですが、支給額が増えるので下げましょう。こういうしかけはなくして、減らない年金にしたいと思います。

<年金>保険料の未納者が1000万人にも

もう一つの問題は、年金保険料の未納者が1000万人にも広がった「空洞化」の問題です。1000万人の多くは、就職氷河期以降の40代前半以下の若者たちです。正社員になれない、派遣やアルバイトで暮らしている。とても毎月1万5000円も払えない、まして25年払い続けないと1円ももらえないのなら無理だ、もらえても最高6万6000円じゃあねと、保険料を払うのをあきらめてしまうのです。

この解決が待ったなしです。1000万人に上る未納者が、「そういうことなら、がんばって払ってみるか」という気になってもらう改革を、大急ぎでおこなうことが必要です。

一つ目は、受給資格を25年から10年に短くする。2つ目に、公費、税金での手当ての仕方を変えて、支給額の底上げをはかることです。現行は、支給額の半分が公費で手当てされています。すると、多くもらう人は多くの公費が入り、少ない人はちょっとしか公費が入りません。これを変えて、現行の満額分6万6000円の半分、3万3000円を、10年以上保険料を払った方みんなに、等しく下駄をはかせる。そうすれば、10年ぎりぎりの方も、最低3万3000円プラス保険料分8000円で、4万1000円の支給となります。こうして、1000万人の未納者が、保険料を払うようになれば、国民年金の財政もより安定するようになります。こういう改革をすすめたい。

<介護>「一体改革」の名で生まれる介護難民

次に介護の問題です。満足な介護サービスが受けられず、悲惨な生活を送らざるをえない「介護難民」が大問題になっています。老老介護や貧困ビジネスの問題があります。ここでも、いま「一体改革」の名で何がやられようとしているかをしっかり見定めて、改革を提案したいと思います。

政府、厚労省の合言葉をご存じでしょうか。「医療から介護へ」「施設から在宅へ」というものです。お金のかかる医療から、安くすむ介護へ、介護も、お金のかかる施設から、安上がりの在宅へということです。いやらしいタイトルのグラフがあります。「死亡場所別、死亡者数の推移と推計」、国民がどこでお亡くなりになるかというグラフです。現在の年間死亡者数は110万人ほどで、そのうち85万人ほどが病院で亡くなっている。それを2030年、年間死亡者数が55万人ぐらい増えたとき、どうするかの推計をしている。病院が89万人、ほとんど増えません。自宅が20万人、介護施設が9万人だそうです。そして、「その他」というのがある。「その他」でお亡くなりになる方が47万人と、増えた死亡者数の大半を引き受けることになっています。

病院でも介護施設でもない、自宅でもない「その他」とは一体何でしょうか。国交省と連携し、「自宅ではない住まい」を多様な形態で用意する。そこに、医療や介護を「外付」で提供する。最後まで、カギカッコ「在宅」で、と書いてあります。「最後まで在宅で」というところは、わざわざ赤字にしてある。これは老人アパートのことです。一軒一軒回っていたら、費用がかかってしょうがない、ドアがずらっと並んだアパートに高齢者を入れて、そこをヘルパーさんなどが、右から左に順繰りに回るという姿です。

これは「一体改革」の先取りとしてすでに始まっています。昨年10月から「サービス付き高齢者住宅」というのが、今年4月からは「24時間定期巡回・随時対応サービス」というのがはじまりました。24時間サービスというのは、1回わずか15分とか20分の超高速サービスです。これで、心の通うケアができるでしょうか。「サービス付き高齢者住宅」について、昨年県に、「貧困ビジネス化しない担保はあるのか」と聞きました。回答がふるっていて、「質も大事だが量が必要なので」というのです。担当者は、福祉部門じゃなくて、土木部門でした。

社会保障切り捨てのオンパレードが始まっている

こうした安上がりの介護ではなくて、しっかりしたケアが保障される特別養護老人ホームをたくさんつくって、待機者をゼロにするとりくみが必要です。県内でも、千葉市の花見川区や美浜区で、「国有地が空いている。ここにつくれ」と運動が広がり、実現の方向です。大いに広げたいと思います。

この他、保育でも障害者でも、生活保護でも切り捨てのオンパレードです。これらを許さず、充実を求める運動が大切になっています。ここで一言付け加えたいのは、こういうひどいことを平気でやる民主党とその政権の思想はどういうものか、ということです。

「自立・自助」社会保障の放棄宣言

政府は、震災ボランティアの姿に社会保障の理想があるといいました。そして、国民生活の基本は「自立・自助」と、それを支援する「国民相互の共助・連帯」だというのです。しかしこれは、歴史的に形成された社会保障観、“公的保障の仕組みなしに国民の生存権は守れない”という、国際人権規約やWHO憲章などの理念の否定であり放棄宣言です。憲法25条を足蹴にするものです。

だから平気で、「社会保障というと切りにくいイメージだが、ムダの宝庫」(前原政調会長)、「国民負担をこえた福祉の要求とは戦わないといけない」(藤井税調会長)といったりするのです。小宮山厚労相は、70-74歳の窓口負担について「残念ながら2割負担にできなかった」とまでいった。もうほとんどいないと思いますが、「自民党よりはまし」なんて思ったら大間違いだということです。

将来の不安は経済も萎縮

いま、命と健康、子育て、老後などの不安は、ものすごいものがあります。「毎日」が、「年金や医療、介護など日本の社会保障制度の将来に不安を感じますか」という調査をやっています。なんと、「感じる」と言う方が、92%に上ります。ほとんど全員です。これでは、消費も経済も委縮するのは当たり前です。ズタズタにされた社会保障への手当てを、待ったなしの財源でおこなう必要があります。

聖域のないムダの削減でこそ

その一つは、ムダと浪費を一掃することです。民主党政権も、「事業仕分け」と称して大騒ぎをしましたが、肝心かなめのところには「聖域」にしたため、「埋蔵金」、一回掘ったらおしまいの財源を、ほんのちょっと見つけただけでした。共産党は、財界のヒモも、アメリカのヒモも付いていませんので、「聖域」に遠慮なく手がつけられます。

大型公共事業

ゼネコンが潤う大型公共事業は半分にして、1兆円の財源をつくります。たとえば八ツ場ダムは、総額で9000億円、千葉県で760億円もの巨額事業です。しかし、水の使用量はどんどん減っているのですから必要ありません。圏央道1300億円、外環道1870億円、経済環境が良くなったら、そのときどうぞ、と言うべきです。

軍事費

軍事費。少なくとも、思いやる先が間違っている米軍思いやり予算はなくす。地上攻撃が専門のF35戦闘機、開発が遅れに遅れ、未完成品を買うことになりそうですが、これ99億円と言っていました。しかし今度、アメリカからきた請求書は191億円だそうです。これ1機分で、特養ホームなら20カ所できます。こんなものや、1200億円のヘリ空母、それから海外派兵の費用などを削減すれば、1兆円の財源がつくれます。

富裕層と大企業に、応分の負担を

もう一つは、富裕層と大企業に、能力に応じた負担をしてもらうことです。

実は、日本の富裕層ほど甘やかされている人たちはいないのです。年間所得に対する所得税の負担率をみてください。年間所得が1億円をこえると、所得税の負担率がどんどん下がっている。累進制になっていません。なぜこんなことが起こるのか、2つの理由があります。

一つ目は、1億円をこえるような富裕層の所得は、給料以外の所得、株式の配当や売買によるもうけが多くを占めており、その税率がたったの10%となっているからです。証券優遇税制というものです。われわれ庶民の貯金にだって20%の税金がかかるのに、その半分しか税金がかからない。所得税の最高税率の4分の1しかかからない。これを少なくとも20%、多い人は30%に課税する。これで1兆円程度の財源が生まれます。

くずれている累進制

もう一つ、所得税は高額所得ほど税率が高くなる累進制だと思っておられるかもしれませんが、実は、いまの日本の所得税は、高額所得者には累進制になっていません。フラットになっているのです。最高税率40%がかかる人は、年収1800万円以上。5000万円もらおうが、1億円もらおうが税率は上がりません。以前はそんなことはありませんでした。1983年までは、年収の刻みが19段階あって、最高税率は年収8000万円、いまなら1億5千万円ぐらいでしょうか、それ以上は75%でした。それが今は、1800万円以上は40%でフラットなんです。ここにメスを入れ、少なくとも、所得税は40%から50%へ、住民税は一律10%から15%に引き上げる。

これらは、わが党だけの主張ではありません。神野直彦さんという方がおられます。政府税調の専門家委員長をされていますが、その方がこういっています。「租税の重要な任務である所得再分配機能が落ち続けている。豊かな者に負担を求め、所得再分配を高める所得・資産課税改革をおこなうべきだ」といっています。政府税調の中心幹部が同じことを言っているのですから、大いに自信をもって訴えていきたい。

大企業向けの優遇税制を正す

大企業向けの優遇税制を正すことも重要です。

たとえば研究開発減税です。10年度の減税額は、3726億円に上りますが、そのうち資本金10億円以上の大企業が、9割以上3340億円の恩恵を受けています。他にも儲けから取り出して、引当金や準備金などに積み上げるとまるまる非課税となる仕組みがいっぱいあります。原発の解体準備金とか新幹線改修準備金とか、大企業しか使えないものです。なかには、海外投資損失準備金なんて言うのもあります。そんなの、それこそ自己責任だろうと思いますが、まさに至れり尽くせりです。

こうした結果、大企業の実際の法人税負担率は、三菱商事12・1%、ソニー13・3%、京セラ16・7%、住友化学17・2%など、実効税率の40%を大きく下回っています。中小企業の税率よりうんと低い。これを実効税率に近づけることで、1・5兆円の財源がつくれます。

財界の脅し文句「空洞化」

こういうと、財界はすぐに、「そんなことをするなら、海外に出ていくぞ」「国内の産業が空洞化するぞ」と言います。しかしこれは、脅し文句にすぎません。

実際に、経済産業省の「海外投資決定のポイントは」という調査があります。それを見ると、企業が海外に投資をするのは、「現地に需要がある、あるいは需要が見込まれる」がダントツで、73・2%です。「税制などの優遇がある」は、たったの8・9%に過ぎません。企業は、需要のあるところに投資をするのです。なぜいま、日本の産業が空洞化しているのかと言うと、日本国内では需要の伸びが見込めない、リストラで労働者を痛めつけているのですから、消費する力が萎えている。元気な中国などの方が、需要が見込めるからです。

富裕税・投機課税

また富裕税、株や土地などの資産に1~3%程度の課税をおこないたい。「うちは持ち家なんだが」という心配は要りません。対象は5億円以上の資産ですから、該当する名誉ある方は5~7万人程度です。これは、戦後直後にあった制度を復活させるものです。また、為替投機課税。1回の取引に0・01%ですから、1億円の取引で1万円の課税。通常の貿易や取引には影響がない課税です。ただし、投機目的で1日に何十回と取引すれば、それなりに負担となる課税など、新たな制度もつくり、総額で12兆円から15兆円の財源をつくります。

財界とアメリカは、目をむいて怒るでしょうが、多くの国民は、ハタとひざを打つのではないでしょうか。

緊急課題達成の後

さて、こうした緊急の手当てを10年ぐらいで終えて、その上で、ヨーロッパなどの先進水準の社会保障へ、抜本的な拡充をはかっていきたい。その内容は、すべての国民に最低保障年金、月5万円を保障すること。国民年金の満額は8万3000円に引き上がります。また、ヨーロッパでは当たり前の、医療費の窓口完全無料や介護保険の利用料の無料化、世界一高い大学学費の無償化への前進などがあります。

ヨーロッパでは日用品は軽減税率

「ヨーロッパ並みに」というとすぐ、「ヨーロッパは、日本の4倍も5倍もの消費税だからできるのだ」という人がいますが、実は、これは大きな誤解です。社会保障財源のうち、消費税、付加価値税が占める割合を見てみると、日本は8・6%です。ヨーロッパはどうかというと、イギリス10・9%、ドイツ10・8%、スウェーデン13・2%。そんなに大きく違っているわけではないのです。税収全体に占める比率も、大きくは変わりません。

なぜかというと、ご存じだと思いますが、一つは、日用品には軽減税率がある。イギリスだと、食料、新聞・雑誌、国内旅行、住宅などはすべてゼロ税率です。もう一つは、GDPに占める家計消費の割合が、格段に大きいのです。6割も占める消費大国は日本とアメリカぐらいです。だから、税率は低くても財源としては大きい。

ついでに言っておきますが、「日本は貿易立国なので、大企業の輸出が減ったら大変だ」というのも大ウソです。GDPに占める輸出の割合は15%程度。それが少し減っても、家計消費がちょっと伸びれば、十分カバーできるのです。

支えあう社会は、みんなが能力に応じて

不公平な消費税ではなく

社会保障を先進水準並みに充実させるためには、最低保障年金だけでも、5兆円の新たな財源が必要です。これをどうするか。「ここでも、富裕層と大企業が負担すればよい」という立場は取りません。多くの国民が、将来の社会保障の充実や財政再建のためには、「自分たちも負担しなければ」とお考えになっているときに、「いや1円の負担もいりません」では、別世界の人、異星人のように思われてしまいます。対話が成立しません。

財界や民主党政権は、まさにそこにつけこんで、「みんなで負担する消費税の増税で」としている。そうではなくて、「国民みんなで支え合いましょう。ただし、それは消費税ではなくて、能力に応じて負担する所得税で支えるのが当然です」。こういう態度でこそ、国民の共感がえられるし、対話も深まると思います。

具体的には、所得税に累進的に1・5%から15%の税率を上乗せする。現在の税率から、3割増しぐらいにして、6兆円程度の財源を確保したいと思います。もちろんそのためには、国民的な議論と合意が必要でしょう。時間がかかります。所得が減るなかでは無理なので、健全な経済成長をすすめて、所得が増えていくなかでおこなう。これも時間がかかります。だいたい、名目成長率を年2%ぐらいと見込んでいますので、10年ぐらいたてば、所得も2割増しぐらいになる。そこから、一定の所得税の上乗せをお願いしようということです。

世界で見直しが始まっている「法人税削減競争」

では、法人税はどうするのか。これは、先ほど言った、実効税率の約40%に近づけることがまず大事で、世界的な動向をふまえた検討が必要だと考えています。

実はいま世界中で、ここ20年ばかり続いてきた法人税の引き下げ競争が、きわめて有害だという議論が広がっています。どれぐらい下げてきたか。1991年と2011年の比較ですが、日本が50%から40%に下げた。ドイツは56%から30%、イギリスは33%から26%、フランスが42%から34・4%。すさまじいのは、40%から12・5%に下げたアイルランドと、46%から20%に下げたギリシャの2か国です。この2カ国は、ご存じのように、国家財政が破たんした国なんですね。

OECDは、「有害な税の競争」という報告書を出していますが、国際協調で、下げ過ぎた法人税率の適切な引き上げをはかることが、将来は求められていると思います。

こうしたとりくみと、この後お話しする経済改革で、2030年ごろには基本的財政収支、プライマリーバランスを黒字に、GDP比の借金の率を縮小に向かわせることができます。

内需拡大で経済発展

次に内需主導の民主的経済改革についてです。
内需主導という場合、大事な指標が2つあります。一つは家計消費です。さきほどもいいましたが、日本の体力=GDPの6割を占める家計を暖かくする改革がどうしても必要です。二つ目は雇用です。雇用の7割を占める中小企業が元気になる改革が大事です。

家計をのばすには

まず、家計です。その土台となる労働条件の改善です。
いま、非正規労働者が全体の3人に1人、若者や女性の場合は2人に1人というのは異常です。千葉県はもっとひどい。ヨーロッパでは1割前後です。派遣法の抜本改正などで、「正社員が当たり前」の社会にしていく。また最低賃金を、当面時給1000円以上に引き上げ、「ワーキングプア」をなくす。将来的には、平均賃金の半分以上を最低賃金の基準にしたい。いま世界では、貧困対策をどう定義づけるかの議論がまとまりつつあります。その国の平均所得の半分以下の世帯は、貧困世帯と位置付けて、国や自治体が支援するという方向です。平均賃金の半分以下だと、まちがいなく貧困世帯に陥る。そういう低賃金は認めない。こうしたとりくみで、大企業がため込んだ260兆円もの内部留保を吐き出させ、経済の循環にのせていこうということです。

中小企業を守って

中小企業はどうか。雇用の7割を引き受けている中小企業は、全国で事業所の99%、420万社あるといわれています。そこで働く労働者の賃金は、大企業の半分です。ここでも、大企業と中小企業の取引を公正なものにして、内部留保を経済循環のなかに吐き出させる。

そのためには、大企業による中小企業いじめ、下請けいじめをなくすことが決定的です。日本には、独占禁止法や下請け代金支払遅延防止法など、中小企業を守る法律がありますが、これがまったく機能していない。2年ほど前に志位委員長が国会で取り上げました。「単価たたき」や「下請け切り」についての是正勧告を、この5年で何件やったかと。たった1件でした。

なぜそうなるのかというと、日本の法律の悪いところ、申請主義になっているからです。力の弱い下請け企業が、「元請けがこんなにひどいことをしている」と訴えられるでしょうか。そんなことをしたら、干されることはまちがいありません。中小企業庁の職員などが、大企業に立ち入り調査して、帳面を出させて、「これはひどい。是正しなさい」とならなければ、絶対に解決しません。

ところが、420万社の面倒をみている中小企業庁の職員が、何人いるかご存知でしょうか。たった200人です。一方で21人しかいない先細りのご家族、皇室の面倒を見ている宮内庁の職員は1000人もいます。これはいかにも、バランスが悪いといわなければなりません。

官公需、国や自治体の発注を中小企業に手厚くすることも必要です。官公需法では、毎年、中小企業発注率の目標をもつことになっています。ところがこれが低すぎる。一昨年が52・4%、大震災のあった昨年は少し引き上げましたが、それでも56・2%です。これを7割ぐらいまで引き上げさせたい。

この点で一言付け加えると、TPPに参加すれば、こうした中小企業への支援はできなくなります。4年前に、「スクールニューディール」政策というのがあました。国が金を出し、学校にデジタルテレビやパソコンなどをそろえたのですが、その地元企業への発注率が、千葉県は0%でした。ヤマダ電機など大手が独占受注した。なぜそうなったか。口実となったのが、WTO政府調達協定でした。物品購入3000万円以上は、一般競争入札にして外国企業に開放しなければならないから、というのです。TPPに入ると、これが数百万円までに下げられる恐れがあります。自治体職員も大変です。入札の文書をすべて英語訳しなければならない。この点からもTPPが、日本と地域の経済にとって、害悪をもたらすものだということは明白です。

再生可能エネルギーは地域経済に貢献

原発から撤退し、地域の条件に見合った「地産地消」のエネルギーに切りかえていくことも重要です。そもそも原発は人類と共存できない。撤退すべきなのは言うまでもありませんが、この問題を、「内需主導の経済成長」というカテゴリーで位置づけることに、注目してほしいと思います。

原発は、放射能汚染という問題とともに、巨大企業による独占とならざるをえない。エネルギーや食糧といった、人間の生活にとって不可欠のものは、ブラックボックスにしてはいけない。その地域の人々、事業体が、生産から維持・管理まで、直接手を出せる仕組みが必要です。

エネルギーの「地産地消」がすすめば、どういう効果があるでしょうか。たとえば、病院や農家のハウスなどでは、ボイラーで重油を燃やしています。仮にある町で、重油代に年間1億円かけているとして、町に落ちるお金はせいぜい数%の売買手数料、数百万円ぐらいです。それを木質チップやバイオガス、廃食用油などに振り替えれば、多少コストが上がっても、1億円がまるまる町のなかで循環することになります。

また、風力発電は有望な自然エネルギーですが、超大型の風車は、低周波による健康被害や環境破壊といった問題があるとともに、まちの業者では維持・管理ができないため、経済効果は限られます。そこでいま、縦軸型の風車や風レンズ風車、小型集合風車などが開発され、各地で設置がすすんでいます。

その地域、地域の、固有の自然環境、固有の産業や伝統のなかから、エネルギーになる財産を見つけ出して、自然エネルギーの導入をはかることが重要です。先日、浦安市で、「うちにはそんな財産はないよ」と言われました。そのとき、はっと思いついて、「浦安市の単位面積当たりの屋根の面積は、きっと世界一じゃないですかね。そこに、太陽光発電や太陽熱の蓄熱装置を設置すればどうでしょう」という話をしました。

雇用効果も抜群です。ドイツでは、自然エネルギー分野での新規雇用が、37万人にのぼるそうです。日本の人口に換算すると58万人。ちなみに、日本の電力会社10社で直接雇用されている従業員数は13万人なので、その4倍以上になります。

千葉県の自然エネルギーの自給率は、実は、全国45位と大変遅れています。太陽光発電の補助金をみると、家庭用3キロワットのものを、東京の新宿区で設置すれば86・4万円になりますが、千葉市なら23・4万円にしかなりません。政治の姿勢次第で、一気に遅れを取り戻す可能性があるということです。

子育てを社会全体が支える仕組みができてこそ

最後に、少子化対策について、ふれておきたいと思います。このまま生産年齢人口が急減してしまうことは、日本の将来にかかわる大きな問題で、成り行きまかせにするわけにはいかない。では、「産めよ増やせよ」と言えば解決するのか。そうではありません。

なによりも、人間として、まともな労働と生活の環境を整備することが必要です。結婚できるかどうかは、実は、労働条件によって大きく左右されます。30代前半の男性で、正社員の婚姻率は6割、非正規は3割にとどまっている。これが現実です。また、女性が社会進出でき、独り立ちできる環境をつくることも重要です。その先進例はフランスにみることができます。フランスでも、90年代後半、合計特殊出生率は1.66にまで低下しました。それをいま、2.02まで引き上げた。家族給付が手厚いのです。GDP比で、フランスは3%をこえている。日本は1%未満です。子ども1人当たり月額最高約8万円の補助が出ます。保育が万全で、家賃補助や学費無料もあり、女性が、一人でも子育てできる環境、子育てを社会全体が支える仕組みが整えられた。

この点でも、民主党政権はひどいものです。今度、児童手当法が改定されましたが、そこにはなんと書いてあるかご存知でしょうか。「目的」には、「(保護者が)子育てについての第一義的責任を有するという基本認識の下に」手当を支給すると書いているのです。民主党のマニフェストには、「子育ては社会全体が担う」とうたっていたのではなかったでしょうか。

政府の「男女共同参画白書」というのがあります。そこには、保育所が不十分なため、働きに出られない女性が455万人もいると書かれています。455万人の貴重な労働力が、保育が不十分なために奪われている。こんな、もったいないことはありません。「子ども子育て新システム」のような、目先のことしか考えない安上がりの保育ではなく、安心して子どもを託せる認可保育所を大量につくらせましょう。F35戦闘機1機分で、40カ所の保育所がつくれるのです。それはまた、地域の建設業者の仕事、保育士さんの雇用を広げることにもなります。

消費税増税にたよらない展望をもって

冒頭に申し上げたように、消費税増税で「暮らしていけない」「商売が立ち行かない」。「でも」という方が大多数を占めています。そういう方々のなかに、どれだけの規模で分け入ることができるかどうか。語る中身は豊富にあります。ここに、今度の消費税増税をストップする展望がある。大いに他流試合に挑もうではありませんか。

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